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手には漫画を持っていて、少女漫画の新刊を読んでいる。
まるで自分の部屋のように寛ぐ海斗は、何も悩みがなさそうに見えて羨ましくなった。
『どうしたの？』
「ん？漫画の最新刊持ってるかなって思って」
『その考え方、もう盗っ人だよ』
「幼馴染なんだし別にいいじゃん。Aのお母さんには挨拶したし」
そう言って漫画を閉じて起き上がると、海斗はベッドに座ったまま私を見つめた。
「で、サッカー部の見学どうだった？」
『どうだったって……』
いい思いはあまりしなかった。
なんて言ったら、宮近くんが悪いように聞こえてしまうだろうか。
こういう時、なんて答えるのが正解なのかな。
「楽しかった？」
『うん』
「その割には浮かない顔してるけど」
……海斗には敵わないな。
思っていること、隠そうとしてもバレちゃうんだから。
隣に座ると、ベッドが少し沈む。
座った瞬間今日の疲れが出てしまったのか 身体が重く感じて、座っている海斗の太腿を枕にするように寝転がった。
「どした？」
寝返りをして海斗の方に身体を向ける。
服の裾を掴むと、何も話していないのに頭を撫でてくれた。
『……3年生のマネージャーの先輩』
「うん」
『美人で優しくて、宮近くんといい感じだった』
「そっか」
ちらっと海斗を見ると、私の方は見ずに壁を見ていて、この話に興味が無いことがわかった。
『ごめん、反応に困るよね』
「サッカー部の見学ってより、ちゃかの見学だったんだな」
『……たしかに、そうかも』
サッカー部より、マネージャーのお仕事より、宮近くんを見ていたのは事実で
その分傷ついてしまったことも、自分の胸の痛みでわかる。
「マネージャー、やりたいの？」
いつもより優しく声をかけてくれる海斗は、きっと私の気持ちを理解してくれているんだと思う。
『ううん、やらない。ふたりが一緒にいるところ見たくないもん』
「そんなにいい感じなんだ」
『宮近くんね、見たことない顔してた』
「それが嫌？」
『うん』
あんな顔、美希先輩にしか見せないんだ。
私にはいつも余裕で、同い年に感じない宮近くんが、きっと唯一対等に話せる女の子。
そんな美希先輩と一緒にいる宮近くんを見てしまったら私……
想像しただけで、既に耐えられないかも。
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作者名：愛生
| 作成日時：2024年1月21日 2時
