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「Aの好きな人は?どんな人なの?」





好きな人。


ドキドキする人、もっと話したいと思う人、もっと会いたいって思う人。


私、さっきまでそう思っていた人がいた。





『好きな人の基準が分からないけど、でも、好きな人に嫌われるのって怖い?』


「怖いね」


『好きな人が離れていきそうになったら、悲しい?』


「うん、悲しい」


『好きな人が目の前にいたら緊張する?』


「するね」


『もっと話したい、会いたいって思って、時間作ろうとして頑張る?』


「そうかもね」





嫌われるのが怖くて、友達としてだと思っていたけど


これってもしかして、異性として好きなのかな。


……だとしたら私、もう失恋してる?





『……そっか、そうなんだ』


「A?」





私、宮近くんのこと好きなんだ。





『宮近くん、ごめんなさい』


「ん?」





初めて異性として好きだって気づいたのに、宮近くんの好きな人とはかけ離れているなんて、残酷だよ。





『……私、学校に忘れ物しちゃったみたい』





忘れ物なんてしていない。


ただ、今の状況を逃れたい。




さっきまで確実に学校にいた幼馴染に、助けを求めたくなった。





「じゃあ取りに帰ろっか」


『ううん、一人で行くから大丈夫』





優しい宮近くんは一緒にきてくれようとするけど、それは今の私にはいらない優しさで。





「こんなに雨降ってるのに?」


『うん。ここまで傘に入れてくれてありがとう』





早口で宮近くんから離れようとすると、宮近くんは私の手を握って傘を渡してきた。





「A、この傘持って行って」


『大丈夫』


「いいから持って行きな」





傘を持たせた私の手が開かないように、上からギュッと握ってくる。


そういうところも、狡いよ。





『本当に大丈夫だから。じゃあね』





傘を無理矢理返して、学校に向かって走る。


さっきより弱まったものの、相変わらず降り続く雨。




海斗、今どこにいるのかな?


部室?教室?玄関?それとも、帰り道?


勝手に流れてくる涙を止められないまま 来た道をそのまま戻るけど、全然見つからない。




ずっとキョロキョロと歩行者を確認しながら走ると、学校にほど近い横断歩道をこちらに向かって渡ってきた人がいた。


……あの黒い折り畳み傘に、あの歩き方。





『海斗……!』





少し離れたところから叫ぶと、海斗は傘を上にあげて私の顔を見た。

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作者名:愛生 | 作成日時:2024年1月21日 2時

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