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「あ。ねぇ、海斗は?ずっと一緒にいたじゃん」





思い出したように海斗の話をし始めたげんちゃんはケロッとしていて、やっぱりさっきのが冗談だったんだと思った。


誰にでもあんな思わせぶりなこと言ってるんだったら、同じクラスの女の子たちは絶対げんちゃんのとこ好きになってるよね。





『海斗ならこの高校にいるよ』


「まじ!?今度会いたいな」





海斗。


宮近くんの前で、海斗のことをそう呼んでしまったのは初めてだった。


学校では普段“まちゅ”と呼んでいたのに、急に海斗呼びなんて違和感を持つんじゃないかと 振り向く。


でも、宮近くんは特に何も気にしていない様子だった。


……意識しているのは、私だけなんだ。





『げんちゃんに会ったこと、海斗にちゃんと話しておくね』


「うん!」





私が海斗と言っても、宮近くんは無反応なことが少し悔しくて、敢えて“海斗”呼びを続けた。


そんなことしたって、宮近くんは私に靡いてくれる訳ないのに。




たわいもない会話をしている間に駅に着いた。


“マネージャーやってよ!待ってるから!”


改札を通り抜けたあと、げんちゃんは私に向かってそう叫んでくる。


手を振って、そのまま私はホームに向かった。




……マネージャー、ね。


美希先輩みたいに、私は次に起きることや部員が必要になることを先読みして行動していかないといけない。


美希先輩みたいに、みんなに気を遣えて、それに……


いつも話す時にぎこちなくなってしまう宮近くんと、あんな風に話せるようにならないと。


そんなこと、私に出来るのかな。




電車に揺られて家の最寄りまで着いたけど、気分は上がらないまま。




あーあ。


宮近くんにとって、別に他のカイトを呼び捨てにしたところでなんの興味もないよね。


だって、宮近くんは中村のことを海人って呼んでるし、そりゃあ別にどうってことない。


わかってたよ。


わかってたけど、でも……


私にとっては、呼び方って かなり意識しちゃうものなんだよ。




そんな考え事をしながら家までの道を歩いて、ぼーっとしたまま家の玄関のドアを開けた。


リビングにいた親に一言ただいまと言って、自分の部屋に向かう。





「あ、おかえり」





部屋のドアを開くと、そこにはベッドに寝転がったスウェット姿の海斗がいた。

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作者名:愛生 | 作成日時:2024年1月21日 2時

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