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「じゃあ、Aのことお願いします」


「はーい。行ってらっしゃい」





美希先輩が宮近くんを見送って、部員がフィールド内に集まったと思うと、準備体操を始めた。





「Aちゃん、何も気にせずにゆっくり見学していってね」


『ありがとうございます』





座って見ていいと言われて、ベンチに座ったのはいいものの、美希先輩はベンチの横に立ったままでソワソワする。


私、本当に座っていていいのかな?




準備体操を終えた部員は、ペアになってパスの練習を軽く始めた。


……宮近くんのサッカーしている姿、ちゃんと見たの初めてだ。


軽い練習をしているだけでもかっこいい。


いいなぁ、マネージャーになったらずっとこの姿見れるのかな?


でも、見ているだけがマネージャーじゃないよね。


今だって、美希先輩は部員の様子を見ながらスポーツドリンクを作っている。






「あ、やべ!すいません!」





美希先輩と宮近くんを交互に見ていると、左側から声が聞こえた。


足元に転がってきたボールを拾って 顔を上げると、目の前にはさっき部室の前で目が合った男の子がいた。





「ね、もしかして、Aちゃん?」


『え……?』





男の子は、目をキラキラ輝かせて聞いてくる。


どうして私の名前、知ってるの?





「やっぱりAちゃんだよね!?」


『えっと?』




同じ学年の子ではない……よね?


じゃあ、タメ口だし3年生?





「俺!覚えてない!?元太!松田元太!」





自分を指さしてアピールしてくるけど、全く心当たりがない。





『松田くん?』


「げんちゃんってよく呼んでくれてたじゃん!」


『げんちゃん……』





げんちゃん。


そう呼んでいたことがあった子が、過去に一人だけいた。


小学生の頃、1つ下の階に住んでいた1歳下の男の子。


海斗と私、それにげんちゃんと呼んでいた男の子の3人で、地元の自治会が主催する小さなお祭りに行ったりしていた。


夏休みの時に3人一緒にラジオ体操も行ったことがあった。





『げんちゃんって、あのげんちゃん?』


「そう!」





太陽のような笑顔の彼は、海斗と私が小学6年生の時に親の都合で引っ越した。


つまり、会うのは約5年ぶりだ。

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作者名:愛生 | 作成日時:2024年1月21日 2時

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