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見学する日になって、帰りのホームルームが終わったあとに宮近くんと一緒に教室を出た。
普段、体育の授業以外で行かないグラウンド。
その近くにあるサッカー部の部室は、目の前を数回通ったことがある程度だった。
「今日は見学だけだし制服のままでいいよ」
『わかった』
サッカー部の人達が出入りしている部室の前で、宮近くんと立ち話をしているけど、サッカー部員で話したことがあるのは宮近くんだけ。
同じ学年の男の子も、関わりがなくてどんな人達かあまり分からないから緊張する。
「緊張してる?」
『うん』
「良い奴らばっかだから、そんな気張らなくて大丈夫だからね」
『ありがとう』
「俺着替えてくるから、ちょっとここで待ってて?」
私の頭をポンッと軽く撫でて、部室に入って行った。
触れられると、ドキドキしてダメ。
撫でられた場所に触れてボーッとしていると、部室から出てきた男の子と目が合った。
その子は、私を見て“あっ!”と声を出した後、何故かニコッと私に微笑んでグラウンドへ向かっていった。
なんだか、不思議な子。
そう考えているうちに、宮近くんは着替え終わったみたいでジャージ姿でこちらに来た。
「お待たせ。行こっか」
『うん。お願いします』
少し後ろをついて歩いていると、サッカーのフィールドの隣にあるベンチの横にポニーテール姿の女の子が立っていた。
スラッとして、とても綺麗な人。
「美希先輩!」
そんな女の子に、宮近くんは迷わずに話しかけた。
「あ、海斗くん。例の見学の子?」
「そうです。今日はよろしくお願いします」
あぁ、この人が唯一のマネージャーなんだ。
宮近くんと話している先輩は、声まで可愛くて。
「こんにちは。お名前聞いてもいいかな?」
面倒見の良さそうな、優しい印象だった。
何一つ嫌な印象がなくて、きっと完璧な人。
『Aです』
「よろしくね。私は美希って言います」
『美希先輩、よろしくお願いします』
私がお辞儀をすると、優しく微笑んで“可愛いね〜”なんて、頭を撫でてきた。
凄く素敵な人なのに、どうしてか私の心は晴れない。
……なんだろう、この感じ。
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作者名:愛生 | 作成日時:2024年1月21日 2時