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中村とふたりで歩く帰り道。
今日はどこも寄り道せずに帰ろうとしていた。
「あ。そういえば、海斗がこの前サッカー部のマネージャー募集しようかなって話してたよ」
さっきまでよく分からない用語ばかり並べて、ハマっているゲームの話をしていた中村。
急に私の目を見てそう話してきた。
『マネージャー?』
「Aのこと誘おうか悩んでたけど、聞いてない?」
『ううん、何も』
宮近くんからマネージャーの話なんて、一言も聞いていない。
「まだ話してなかったんだ。今マネージャーが3年生1人だけだから、もう引退でいなくなっちゃうんだって言ってたんだよ」
『そうなんだ』
「興味無い?マネージャー」
こてんと首を傾げた中村。
『何するかよく分からないし、そもそもサッカーも難しいことは分からないから、そんな私が入るのは申し訳ないよ』
「わかった。俺から話したってこと海斗に言っとくわ」
『うん。よろしく伝えてね』
駅について中村と別れたあと、家に帰ってから寝る準備をしていた22時過ぎ。
充電していた携帯から着信音がした。
画面を見ると、電話は宮近くんからだった。
『も、もしもし』
「もしもし?急にごめん、今大丈夫?」
宮近くんからの電話なんて、緊張して心臓に悪い。
見えていないのに、やっぱり身なりを整えてしまう。
『大丈夫だよ。どうしたの?』
「マネージャーの話、海人から聞いた?」
『うん。3年生しかいないって』
「サッカーについて分からなくてもいいから、1回見学だけでもって思ったんだけど、どうかな?」
『うーん……』
「無理にとは言わないよ。こういうことは人づてじゃなくて、ちゃんと俺から話した方がいいと思ったから電話しただけだから」
何か理由がないと電話しない、それくらいの距離感だけど、それでも電話をくれたのが嬉しくて……
『……見学、行こうかな』
マネージャーをする気はないのに、行こうかな、なんて返事をしてしまった。
「ありがとう。見学してみて、無理そうだなと思ったら断っていいからね」
そのまま見学する日を決めて、電話を切った。
普通に話すのも緊張するけど、電話ってどうして違うような緊張感があるんだろう。
この日は、なんだか緊張したままでよく眠れなかった。
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作者名:愛生 | 作成日時:2024年1月21日 2時