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「おはよう」
家を出ると、制服姿の海斗は欠伸をしていた。
『おはよう。海斗風邪ひいてない？』
「俺は大丈夫。Aは？」
『私も大丈夫だよ』
前みたいに、雨にあたって風邪をひいていなくて良かった。
いつも通り学校に向かっているけど、内心どうしたらいいかわからなくて。
宮近くんのこと、好きだって本人にバレたらどうしよう。
宮近くんの理想の好きな人になれるまで、出来ることならバレたくない。
昨日借りたジャージもタオルも傘も、持ってきたけどなんて話して渡せばいいかわからない。
「A」
『ん？』
「そんな泣きそうな顔しなくても大丈夫。ちゃかには今まで通り接してたらいいよ」
『どうしてそんなこと言うの？』
「不安なんだろ？ちゃかと話すの」
今まで通りって、どんな感じ？
意識して話していなかったから、わからない。
『……私、今まで通りが分からなくなりそう』
「俺がいればいつもみたいに話せる？」
『それは、多分？』
「じゃあAの気持ちが落ち着くまで隣にいる」
『ありがとう。海斗がいてくれたら安心する』
電車に乗って、最寄り駅で降りていつも通り歩く。
いつも通り、いつも通り……
「A、クラ！おはよう！」
後ろから、中村が来た。
でもいつも隣にいるはずの宮近くんは何故かいない。
『おはよう』
「おはよう海人。ちゃかは？」
「それが、海斗風邪ひいたみたいで病院行ってから来るって。休めばいいのに、部活の試合近いから練習したいんだって」
「まじか。心配だな」
風邪って、私に傘を貸したからじゃないの？
自分は雨にあたって帰って、あの後風邪ひいちゃったの？
『……私のせいだ』
「違う」
海斗は隣で否定してくれているけど、絶対に私のせいだよ。
この前の海斗だけじゃなくて、宮近くんまで風邪ひかせちゃった。
しかも、昨日なんて私は折り畳み傘を持っていたのに。
私が宮近くんに会いたいから、話したいからっていうエゴで傘を持っていることを隠して……
『絶対私のせいだよ。どうしよう私、最低だ』
「大丈夫だって」
「A、どうした？」
私と海斗の様子を見て、中村は不思議そうに聞いてくる。
『まちゅの次は、宮近くんのこと風邪ひかせちゃった』
私、宮近くんのことになったら涙脆くなるのかな。
今も涙が出そうで、何とか必死に堪えている。
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作者名：愛生
| 作成日時：2024年1月21日 2時
