◇ ページ3
いったい今まで何人の女性を落として弄んできたのだろうか。
ほんの少しだけ幼さの残るこの甘い顔と、酷く耳の奥に残るこの声で。
「・・・今日は、もう帰ります」
「おや、珍しく動揺させることに成功したらしい」
満足気に笑う彼に図星をつかれた私は否定も出来ずに、ごまかすようにそそくさと手を動かすことしか出来なかった。
けれど彼が今日この後別の女性の家に行く事を私は知っている。昨日も、一昨日もこの医務室を出たあと女の人と彼は会っているのだ。
何人もいるうちの1人にしようとされているなんて、女としてこれ以上の屈辱があるだろうか。
「太宰君も早く帰ってあげた方がよろしいんじゃないですか?昨日とは違う彼女さんがお待ちですよ」
「え・・・ちょっと聞いてもいいかい?」
「なんですか?」
「どうして知っているんだい?」
彼もまた珍しく動揺しているようで、まるで私が何も知らずに弄ばれてくれるとでも思っていたかのようで。
「貴方が大嫌いな双黒のもうおひとりが教えてくださいました」
嫌味ったらしく、それはそれは笑顔で答えれば「今までで1番いい笑顔」と言った後ものすごく小さな声で「中也め」と恨み言を述べた。
何故中也君が私にその事を教えてくれたのかは知らないけれど、ここで太宰君に反撃出来たのは随分と大きい。
正直私が太宰君と他の女がどうなっていようと関係無いしどうでもいいので彼がここまで動揺するとは思っていなかったが結果オーライといこう。
「嫉妬した?」
「貴方めげませんね」
「ただで起き上がるのは癪だから」
今のはきっと中也君に向けての言葉だろう。2人の仲の悪さは2人と直接の知り合いでは無い構成員にも届くほどだ。
「それで、君は嫉妬してくれたのかい?」
「いえ、そもそも何となく分かっていたのでやっぱりかという感想しかありません」
「やっぱり君は手強いなぁ」
あぁ、たぶんここで「嫉妬しました」と可愛く拗ねるのが普通の女の子で、太宰君はただ珍しいもの見たさでここに来るのだろう。
なら、私が普通の女の子みたいに彼に一目惚れして尽くすような女になったら彼はどうするのだろうか。
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柚子豆腐(プロフ) - みなづきさん» コメントありがとうございま!文章を褒めて頂けるのはほんとにめっちゃ嬉しいです!!より楽しんで頂けるよう頑張ります!! (2021年3月10日 4時) (レス) id: 63b1aa4dbe (このIDを非表示/違反報告)
みなづき(プロフ) - 死ぬほど好きです!!!文章が綺麗で、キャラクターとしても太宰がひたむきというか、原作のままなのがもう好きすぎて、、100億回くらい10点押したいです。続き楽しみに待ってます! (2021年3月9日 22時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚子豆腐 | 作成日時:2021年2月25日 4時