ただのセレブ ページ10
車で走らせて二十分程で現場には着き、私と中也の恰好はどう見ても一般人そのものだった。
ビルに入るや否や、私と中也のことを待っていた部下達がざわつき始めて。
まぁそりゃそうだろうなと思いつつ、なんの足しになるかはわからないが部下のかけていたサングラスをふんだくり自分でかけた。
「今ボソッとファビュラスっつった奴出てこい」
「んなキレるなよ」
そういって私を窘める中也の肩が小刻みに揺れているのを私は見逃さなかった。
「敵の要求は」
「この間捉えた捕虜の解放だそうです」
「今の状況は」
「フロント企業の従業員が人質にとられています」
「なるほどね」
この間捉えた捕虜は、海外に本支部があると踏み情報を聞き出す為に捉えていたのだ。なかなか口を割らず手こずっていた所だ。
いいこと思いついちゃったんだなー。
「待て、その顔はろくな事考えてねぇだろ」
「そんな事ないわよ。これ以上ない良作戦だわ!」
「…………言ってみろ」
「私がかわりに人質になってくるわ!」
声には出ていなかったが、何言ってやがるこの莫迦はとはっきり中也の顔に書いてあった。
「今私はどう見たってマフィアの戦闘員には見えないでしょう?ここの責任者ってことにして私と彼らとトレードしてもらいましょう」
「ありえねぇ、論外だ」
「貴方の許可はいらないの。ここの管轄は私だし、ここの従業員を全員殺されちゃ大赤字になるわ。私の責任よ。他にいい案があるなら受け付けるけど」
「なら俺が行く」
「駄目よ、貴方は顔が割れてる可能性が高いもの」
今適任者は私しかいないのだ。
中也は納得のいかないと言った面持ちだが、それ以外に手はない。
とりあえず人質が私ひとりになれば、中也も気兼ねなく異能を使えることだろう。
「安心して、上手くやるわ。ちゃんと助けに来てくれるって信じてるから」
「無茶すンなよ」
「わかってるわよ」
じゃあね、と不安げな中也を取り残し私はエレベーターで最上階へと向かう。
ここからは私の演技力がものを言う。
最上階は嘘みたいに静かで、私のヒールの音だけが響いている。
中也にああは言ったものの、怖くないわけがなかった。
だって私、丸腰である。私の話も聞かずにいきなり撃ち殺されたらそれまでだ。
なんとかなりますように、と祈りながら私はドアノブに手をかけた。
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謝花 - 続編おめでとうございます! (2019年9月16日 8時) (レス) id: 157490c8f1 (このIDを非表示/違反報告)
天草嶋(プロフ) - 柚子豆腐さん» 更新ありがとうございます…!凄く楽しみながら読ませていただいています!私自身太宰も好きなので太宰が夢主に言った「私にしなよ」って言う台詞に凄く(良い意味で)頭を悩ました(大歓喜)それに構わず安定してる夢主も最高です…今後も更新楽しみにしています!! (2019年8月14日 22時) (レス) id: be6bb92be5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうくん(白夜)(プロフ) - このお話大好き!! (2019年8月13日 11時) (レス) id: 891a01bcc7 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 天草嶋さん» コメントありがとうございます!私自身書きたい話がいくつかできたので書かせていただくことにしました!ご期待に添えますよう頑張りますので続編でもどうかよろしくお願いします。 (2019年8月13日 2時) (レス) id: fe52aa1231 (このIDを非表示/違反報告)
天草嶋(プロフ) - 続編が読めるなんて夢にも思っていませんでした…!凄く嬉しいです。また新たな中也と夢主の絡みが観れると思うと本当に嬉しいです!私の願いを叶えてくれてありがとうございます!これからも更新心待ちにしています!! (2019年8月12日 18時) (レス) id: be6bb92be5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚子豆腐 | 作成日時:2019年8月12日 0時