魂の抜けた顔 ページ9
「こういうのが好みだったの?」
中也が選んだのは白いレースのワンピース。
いかにも男の中の女子を具現化したようなそのワンピースは、何を血迷ったのかいつぞやの私が衝動買いし、買ったはいいものの似合わないのでクローゼットの奥の方にしまい込んでいたのだ。
まあ選んでくれと言ったのはこちらだし、そろそろ着てあげないとこのワンピースもかわいそうなので着るには着るのだが。
「変、じゃないかしら」
「変じゃねぇよ、俺が選んだんだぞ」
可愛いって、言ってほしいんだけどな。とは思っても口には出さなかった。
中也はワンピースを着た私を見て、満足したらしく、それが伝わっただけでも十分だ。
「さて、そろそろ出ましょうか」
「今日は俺が運転でいいな」
「いつだって貴方が運転でいいわよ。貴方の車なんだし」
いつもは部下が迎えに来るのだが、本人は自分で運転したいらしい。好意を無駄に出来ない優しい男である。
二人で車に乗り込んこんだ。その時、二人の携帯が同時に鳴り響いた。
中也の顔を見なくても、どんな表情をしているのかが想像できたし、自分の顔もそれはそれは酷いものだろう。
ため息をつきながら携帯に出れば焦った部下の声と、その奥で聞こえる銃撃戦の音。どうやら応援要請らしい。
「わかったわ。すぐに行く」
「なんの要件だった」
「不正入国した海外の組織の制圧、はこの間したはずだったんだけど、取り逃がした数人が他の組織と共謀したらしくてうちのフロント企業に立てこもったって」
「こっちも首領から同じ件だ」
せっかくの非番はどうやら潰れてしまったらしい。
着替えている暇もなさそうなので、このままいかなければならないのかと思うと億劫である。
「そもそも、どうして幹部がこうも現場に走り回らないといけないのかしら」
「今は本部が手薄になってるからしょうがねぇだろ」
「大先輩の紅葉の姐さんに行かせるわけにもいかないしねぇ」
今日のデートはお預けかぁ。
次はいったいいつ非番が重なるのだろうか。そう考えると気が遠くなったので、私は考えるのをやめた。
「とりあえず立てこもったやつは許さない」
「お、珍しくやる気じゃねぇか」
「早く終わらせて帰りたいだけよ」
今の機嫌は最悪である。
781人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
謝花 - 続編おめでとうございます! (2019年9月16日 8時) (レス) id: 157490c8f1 (このIDを非表示/違反報告)
天草嶋(プロフ) - 柚子豆腐さん» 更新ありがとうございます…!凄く楽しみながら読ませていただいています!私自身太宰も好きなので太宰が夢主に言った「私にしなよ」って言う台詞に凄く(良い意味で)頭を悩ました(大歓喜)それに構わず安定してる夢主も最高です…今後も更新楽しみにしています!! (2019年8月14日 22時) (レス) id: be6bb92be5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうくん(白夜)(プロフ) - このお話大好き!! (2019年8月13日 11時) (レス) id: 891a01bcc7 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 天草嶋さん» コメントありがとうございます!私自身書きたい話がいくつかできたので書かせていただくことにしました!ご期待に添えますよう頑張りますので続編でもどうかよろしくお願いします。 (2019年8月13日 2時) (レス) id: fe52aa1231 (このIDを非表示/違反報告)
天草嶋(プロフ) - 続編が読めるなんて夢にも思っていませんでした…!凄く嬉しいです。また新たな中也と夢主の絡みが観れると思うと本当に嬉しいです!私の願いを叶えてくれてありがとうございます!これからも更新心待ちにしています!! (2019年8月12日 18時) (レス) id: be6bb92be5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:柚子豆腐 | 作成日時:2019年8月12日 0時