お好みのものを ページ8
まだだるい瞼を半分ほど持ち上げ、真っ先に飛び込んできたのは橙色の髪。
服はお互い来ておらず、私の両腕が中也の頭を抱え、中也は私の胸の中ですやすやと寝息を立てている。
柔らかい髪をゆっくりと撫でていると、私よりも眠りの浅い中也は起きてしまったらしく、手袋をしていない彼の手が私の頭をかき乱した。
「おはよう、いい朝ね」
「おはよう……」
そう言いながら中也の体からは力が抜けている。まだ寝ぼけているらしい。
最初にくらべ、中也は私の隣で安心して眠るようになったことが嬉しくてつい口元が緩んでしまう。
最初は、目が覚めた時既にもぬけの殻になった隣を見るのが嫌で、彼を逃すまいとしがみついて眠るようになったが、その心配もなくなったわけだ。
「さ、今日は買いたいものが沢山あるんだから早く起きて」
寝起きが悪いのはどちらかと言えば中也の方じゃないか。
二度寝しようとする中也を引っ張り起こし、眠気覚ましに珈琲を入れてやった。
中也が珈琲をゆっくりと啜っている間に、私は着替えて化粧を済ませようと思っていたのだが、ここで一つ問題が発生した。
服が、決まらない。
久しぶりのショッピング。
久しぶりのデート。
髪の毛からつま先まで私は完璧にしたいのだ。
長時間歩くとして、勿論スニーカーの方が歩きやすいのでパンツスタイルにしようかとも思ったのだが、私としてはスカートで可愛らしく決めたいのである
「中也〜、服選んで」
「うお、どうした急に」
服が決められず、結局中也に泣きつくことに。
珈琲によってもう完全に目が覚めたらしい中也はそれを聞くなり、意気揚々と私の部屋へと乗り込んできた。
クローゼットを開け、目ぼしい服を数着引っ張りだし私と服を交互に見て、悩み出す。
これは中也でも少し時間がかかりそうだなと思い、私は先に化粧をしようとドレッサーの前に腰を下ろした。
斜め後ろで、中也の唸り声をBGMにして、いつもより丁寧に顔を作っていく。
というか中也、君は本当にいい男だな。
彼女の服を選ぶのにこんなにも真剣になる男など、この世には指折り数えるぐらいしかいないだろう。
これが紅葉の姐さんの教育の賜物(太宰君によれば)かと素直に関心せざるを得なかった。
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謝花 - 続編おめでとうございます! (2019年9月16日 8時) (レス) id: 157490c8f1 (このIDを非表示/違反報告)
天草嶋(プロフ) - 柚子豆腐さん» 更新ありがとうございます…!凄く楽しみながら読ませていただいています!私自身太宰も好きなので太宰が夢主に言った「私にしなよ」って言う台詞に凄く(良い意味で)頭を悩ました(大歓喜)それに構わず安定してる夢主も最高です…今後も更新楽しみにしています!! (2019年8月14日 22時) (レス) id: be6bb92be5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうくん(白夜)(プロフ) - このお話大好き!! (2019年8月13日 11時) (レス) id: 891a01bcc7 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 天草嶋さん» コメントありがとうございます!私自身書きたい話がいくつかできたので書かせていただくことにしました!ご期待に添えますよう頑張りますので続編でもどうかよろしくお願いします。 (2019年8月13日 2時) (レス) id: fe52aa1231 (このIDを非表示/違反報告)
天草嶋(プロフ) - 続編が読めるなんて夢にも思っていませんでした…!凄く嬉しいです。また新たな中也と夢主の絡みが観れると思うと本当に嬉しいです!私の願いを叶えてくれてありがとうございます!これからも更新心待ちにしています!! (2019年8月12日 18時) (レス) id: be6bb92be5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚子豆腐 | 作成日時:2019年8月12日 0時