恋愛時計【S.S】 (ページ9)

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９諦めページ9

櫻井先輩がスタスタと教室の扉の方に向かっていく。

「あ、の……私了解なんてしてないんですけど」

いつもの自分に戻る。さっきまでの強気な私はどこへ行ったのか、まるでこの先輩のこの頼みを断れる自信がない。断らなきゃいけないのに……。

櫻井先輩が扉の目の前でクルリと振り返って、ニヤッと口角を上げた。

「これさ、今出ていったら質問攻めにされると思うよ？おまけに性格のわるーい女の子からはいやがらせ受けると思うなあ～。興味ないんだったら近づくなって」

私の方へ戻ってきながらそう言う櫻井翔という先輩は本当にずるい。
どうしてそんな自信が出てくるんだろうか。できれば分けてほしい。

何も答えない私に、櫻井先輩は少し困ったようにため息をついた。

「じゃあ、外に出た時なんて説明する？」

……別に私は悪くないんだから、ため息なんてつかないでください。

なんて、言えない。

「普通に話してただけっていえばよくないですか？」

「なんか、怒ってる？(笑)なんなら彼氏って言ってもいいんだよ？」

…怒ってる？なんて、先輩が悪いのに。

彼氏なんて、絶対に言いたくない。そんなこと言ったら、あの日の私のもう恋をしないと強く固く誓った決心はどうなるの？

考えただけでも嫌気がする。

もう、正直に言うしかないと思った。言いたくないけど。

「あの、ちょっと…」

「ん？」

「私、絶対に恋しないって決めたんですよね。…だからそういうのはちょっと」

「どうしてか、とかそーゆー詳しいことは聞いてないけど、それも聞いたから知ってる。でもさ、俺もAちゃんも好きにならない限り、これは恋じゃないじゃん？」

そういわれると言葉が出ない。
確かにそうかもしれない。
先輩がそんな真剣に考えているわけがない。

遊びだし、私を弄んでるだけなのはわかってる。

だけど傍からみたらこれは恋に入ることになるわけで。

「いやぁ、でも…」

「…そんなに嫌ならわかった。外に出たとき、何もないって説明してくれたらいいから」

最後はあっさりと引き下がってくれて、ホッとする。

「そう…ですよね……」

「よし、じゃあ行こっか。俺後ろで見てるよ」

「え、協力してくれな…「カレカノの提案、乗ってくれなかったからしないよ」」

そう言ってニッコリ笑った彼が、今日一番恐ろしい気がした。