さよなら代役Ⅲ【8人目】 (ページ3)

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君がいなくても私はきっと私でいられると思うページ3

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雪ちゃんが居なくなって随分経った。

私の周りは少しの変化があったきり、
あとはいつもと同じ日常が世話しなく流れている。

雪ちゃんという最大の理解者を失った私は、
今、章ちゃんという素晴らしい人を理解するチャンスを得ている。

私は一人だ。でも一人ではないらしい。

他の人にしてみれば当たり前のことを私をようやく分かり始めている。

私は多分まだ、雪ちゃんをどこか自分の中で探し続けてしまっている。

私にとって大切で、かけがえのない人。
二人で居た時間は尊く、なんだろう、あの時の自分が好きな自分もいる。

だけれどもう私たちは私になってしまった。

二人で生きてきた。

辛く長い、出口のない悪意を被りながら歩いてきた。
蹴落とし合うこの世界になんとか立ち続けてきた。

勿論、家族、メンバー、事務所の人、そしてファンの方のおかげで。

でも一番近く、私を見ていたのは雪ちゃんだった。

私という入れ物の中で暮らし、守ってくれた。
私と同じ景色を見て、私の知らない世界を知っている人だった。

彼女は随分、哀しいものや苦しいものを見ただろう。
9歳なのに、子どもなのに、彼女は私が大好きだから我慢してくれた。

私も「あたし」が大好きだった。
生まれて初めての相互愛情だと言って良いと思う。

ずっと考えていた。

雪ちゃんが生まれた理由って何なのか。

虐待の為に生まれたなら、何故すぐ居なくならなかったのだろう。
母代わりの人格の朝子さんはママと暮らし始めてから消えたというし。

その存在意義が、最近分かってきたような気がする。

雪ちゃんは、私の恋人の代わりだったんじゃないかな。

私たちの親密な関係はどこか恋のそれに似ていた。
雪ちゃんは絶えず、私を思い、そして心配し、愛してくれた。

その雪ちゃんは章ちゃんにすべてを託し
消えたのだから、信憑性はあると思う。

雪ちゃんを私の妄想の産物であるとか、私本人であるとか、
まあ、他の人は色々邪推するだろう。

でも私たちは、私たちの中で紛れもなく「私」と「あたし」であり
彼女は年を取らない永遠の9歳だった。

これだけは間違いない、事実だ。

でも私の近くには今、章ちゃんが居る。

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