. ページ6
.
「じゃあ、あのAは俺の知ってるA、」
『確認する必要があります。
小早川Aさんと同一人物が、世界A'で
生まれていたとしても、小早川Aさんとは
全く同じ人生を歩んでいるわけではありませんから、
違いが出ます。
小早川Aさんには後天性の身体特徴などはありまスか?』
「ええ、そんな分からへんってー
………あ、歯の矯正とか…?」
『それは小早川A'さんもしてイるかもしれませんが』
「もうフルネームやめえな。長い。
…でもそれはそうやな。なんやろ、他にあるかな。
見れば分かるかもやけど。
でも本物も偽物も、同じ顔で生まれてきてんねやろ」
『本物とか偽物ではないのでス。
どちらも本物でス。住む世界が違うだけなのでス』
住む世界が違う、ってこんな文脈でも使うんや、と
少し発見をしたりなぞする。
「よこやまさん、まだ大切なことはありまス。
よこやまさん自身のことでス」
「…せやな」
『山村直樹(やまむら・なおき、199✕年✕月✕日〜)は
日本の実業家。
株式会社ホテルヤマムラ代表取締役補佐。』
「いや誰、あと若」
『よこやまさんでスよ。
言ったじゃないでスか、両親も出生時期も
違う可能性があるって』
「にしてもや」
『父親は山村修。
株式会社ホテルヤマムラ代表取締役社長。
母親は明美、旧姓は三谷。
「香織あき」として歌手活動の経歴あり。
兄は直和、株式会社ホテルヤマムラ代表取締役。』
「つまりさ」
『はい。
東京、大阪、名古屋、福岡に系列ホテルを持つ
ホテルヤマムラ創業者の曾孫であり
代表取締役補佐、なんていう肩書きを持ちながら
実際は、三代目の父親とアイドル上がりの母親に
甘やかされ、家督を継ぐのは兄という気楽さの中
こんないいマンションでのうのうと暮らしている
筋金入りの御曹司さまって訳でス』
「良いご身分やなあ」
「でもさ、ソイツどこにおるん?え、不法侵入?」
『でも、そこにあるのは彼の携帯電話ではありまセんか?
それに、僕の人工知能をフル回転させて考えてみても
普通、並行世界同士の同一人物は、出会えなイ…』
「出会えへんて」
『鉢合わせなんて出来ないはずでス、
磁石の同極のように、常に反発し弾くのでス』
「安心してええのかな、これ」
『はい。
しかし、この件の核はAさんが必ず絡んでいまス。
帰り方も帰らせ方も、彼女がAさんであるなら、
必ず仕組んだ人物が居まス』
.
53人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひるた(プロフ) - このような文章形態のお話、大好きです。首を長くして更新を待っております。文章がもう…ド性癖です。なにかの作品の影響を受けられたのでしょうか…? (2023年1月16日 2時) (レス) id: d618c40589 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆうみ | 作成日時:2020年2月12日 21時