また会えて良かった【青】 ページ33
また会えて良かった【青】
君は、突然帰ってきた。
当然のように、少し恥ずかしそうに、でもそれは必然やった。
君は、11歳になっていた。
でも、背も顔も髪も何にも変わってへんくて
僕も、みんなも、嬉しくて仕方なかった。
どうしたん、何かあったん。
そんな問い掛けに、はにかんで
「ほんまに嬉しい」と繰り返した。
君は小林さんになっていた。
そしてどうして南が小林になったのかの経緯を聞いた。
引っ越しの理由が、親の転勤ではなく
火事でお父さんが亡くなられたことやったこと。
女の子やったから、誰も家を見たことなくて
実名報道もされへんかったから
僕らは知らないままやったこと。
お母さんが犯人を疑われて
兵庫に住めへんくなったこと。
お母さんの代わりにお金を稼ぐために
東京で、一生懸命仕事してたこと。
でもお母さんも亡くなってしまったこと。
引き取られた家で、折り合いが悪かったこと。
仕事を中断せざるを得なかったこと。
結局、児童相談所へ保護されるまでになってしまったこと。
その後も親戚をたらい回しにされたこと。
そんな中で、共演経験があり
社長とも繋がりのあった青山さんが
君を養子に取ったこと。
その青山さんの本名が小林なこと。
これからまた、一緒にJrで居れること。
君は何度も泣きながら、全部を教えてくれた。
それを聞いた横ちょが
「じゃあ俺はこれから南やなくてAって呼ぶわ」
と笑った。
自分も難しいことが沢山起きた横ちょやからこそ
こうやって、普遍的に変わらへん
Aちゃん本人を見てるでって最初に言えたんやと思う。
それから暫くして一緒に仕事することが
当たり前になってた。
それやのに、Aちゃん抜きで
グループが結成されたあの時も
Aちゃんは平気そうやった。
「みんなの後ろで踊れて、ロケも行けて
ドラマとかも出れてるし。家帰ったらママ居るし」
これが口癖で。
後々、本人は
『どうせ女やし高校くらいで
辞めんねやろうと思って気楽やってんな』
なんてと言うたけど、本音は当時の方な気がする。
僕らがデビューした時一番喜んだのがAちゃんや。
バックにつけて嬉しいって飽きもせずお祝いしてくれて
僕らが、気まずくなる隙を与えなかった。
.
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作者名：ゆうみ | 作成日時：2020年2月27日 11時
