さよなら代役【8人目】 (ページ31)

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あの日くれた言葉信じてるのページ31

あの日くれた言葉信じてるの【A】

私は忘れない。

例えこれから先、記憶の彼方に霞み続けるとしても、
辛く悲しく私が、私として生きられなかった
あの時間を、忘れられない。

ママが手を伸べて引き上げてくれなければ、今の私はいない。

だから私は、私がアイドルをすることで
「もう少し、生きてみよう」と思ってくれる人が
一人でも二人でもこの世に居るのなら
私も、誰かの『ママ』になりたいと切に願う。

私は忘れない。

ママの、いや琴子さんだった頃のママが
私に、言ってくれたあの言葉を。

私の不安を全部潰そうと一生懸命
突っかかりながら止まりながら紡がれたあの言葉は
私の心の土台として
この厳しい世界で戦っていく礎になっている。

「もう引っ越ししなくていいし
お仕事もAちゃんが
したいなら全力でサポートさせてほしい。
私、結婚してないし、これからもしない。
子供も、多分無理だから、生まない。
それに、私のお父さんも居るし
私家建てるし、普通の人よりはお金もある。
塾も、留学も、大学も、なんでもしていいし
旅行にもいっぱい行こう。
何回も何回も一緒にご飯食べて
いっぱい話して、だんだん仲良くなろう。
だからさ、その…私と家族に、なってくれない？」

家族に、なってくれない。

あの瞬間に、私は少しだけ人間に、戻れた。

もう二度と私は、私以外になりたくない。

弱い自分になりたくない。

私はママのように、強く有りたいと思った。

そう思えた。

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