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妄想よりも儚く、残酷な真実に ページ23

妄想よりも儚く、残酷な真実に【A】







私達は涙なんか出なかった。

あまりに突然で、見せられたその焼けた腕を父だなんて思えなかった。



でも間違いはなかった。

その時間に、そこで寝ていた歯の治療痕が同じ男性は
どう頑張っても、私の父でしかなかった。





それから、様々な話を聞かされたけれど
私達の、納得するような答えはなかった。




放火には間違いがなかったが
最近、付近でそのようなケースはなく
防犯カメラにも、特に証拠はなかった。








犯人不明のまま、事件は未解決になった。

私と母は、近くのアパートで身を寄せ合って
新たな生活を始めた。




しかし、犯人が逮捕されなかったことで
近所ではなぜか『母が放火した』という噂が立ち始めた。



私のことで怒鳴り合う声が
きっと近所にも聞こえていたのだろう。







私は、小学校でいじめに合うようになり
母は職場に居辛くなった。







そして、ついに家を取り壊し、土地を売り
ローンを抱えたまま、私達は逃げるように
母の故郷、埼玉へ移り住んだ。






名字を、母の旧姓に戻し、二人とも
最初から母子家庭のような顔をして暮らした。









でも私は、本当は母に聞くべきだったのだ。








「ほんまは、お母さん、火いつけてないよね」

「お父さん、ころしたりなんかせえへんよね」と。








でも聞けなかった。


もし、火災を故意に起こしたのが、母だったら。

そんなこと想像しただけで恐ろしかった。




母は、日に日に憔悴していった。








今は無い我が家のローン、先の見えない生活、夫の喪失。



全てが母にのしかかっていた。







この頃には母は既に仕事が出来なくなっていて
私の稼ぐ子役としてのギャラで私達は、自転車操業していた。






いや、私の仕事にとっては良いことだった。
埼京線に乗れば東京はすぐそこで
この頃には、東京のjrに混ざって仕事をしていた。









夏が来て私が引越し先の学校にもなれた頃、母は首を吊った。









その日は、コンサートバックにつく日で
家から近いアリーナに、8時まで出て
他のちびっ子jrと一緒に、家路に着いた。








鍵は、掛かっていなかった。

真っ暗な部屋で、母の足だけが白く浮かんで居た。


私のせいだ、そう思った。

私のせいで噂が立って、母は…







私は、こうして本当の独りになった。







.

いつか叫んでた S.O.S→←もう二度と戻れない日々



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設定タグ:関ジャニ∞ , 8人目 , 紅一点   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:ゆうみ | 作成日時:2020年2月27日 11時

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