全てを敵にしても守る【琴子ママ】 ページ21
全てを敵にしても守る【琴子ママ】
「あの、こういうことになりましたので
よろしくお願いします」
「…はあ、」
「Aちゃん、荷物まとめてきて」
「え、今ですか」
「そう、今」
「……はい！」
泣きそうな顔のAちゃんが
私の腕を離れ、二階へと駆けていった。
「では、これから書類など
色々ご協力頂くと思うのですけど
事務所通じて連絡しても、よろしいでしょうか」
「…はい」
気の抜けたような返事が帰ってきた。
私はすでに達成感でいっぱいで少し怒りを忘れていた。
そして、ランドセルと、ボストンバッグに入るだけの
荷物しか持ってないAちゃんと
ふたりで、その時住んでいた私のマンションに帰った。
その家路は今で起こったことの話をした。
彼女のなかでこの2年近くは
まだ全く、整理されていなかったんだろう。
どの話もこんな特別な子に
起こることとは思えなかった。
家に着くと、夢が解けたようになんだかどぎまぎした。
明日からがリアルにふたりに迫ってきて恐ろしいほどだった。
「…あのさ」
「はい」
「私達ね、その、養子縁組、
することになるかな、と思うんだけど」
「……はい」
「いいかな、それで」
「…………お願いします」
「そうなると、養母になるんだけど
もうAちゃんは10歳だしね
特別養子縁組じゃないから
戸籍にも養子って書かれるのね。
だから、そのお母さん、とか思えないだろうし、その」
怖くなって言い訳を並べる子供のように私は呟いた。
それなのに、Aちゃんは
そんな私よりきっとした顔をした。
「いえ、琴子さん。
私、今日から琴子さんの子になります。
お母さん、って、呼ばせてください。」
「……」
こんな小さい子にここまでの決意をさせるほどの
環境だったのか、と胸が苦しくなって、涙が出た。
「いや、あかんねやったら、」
「ママって、」
「え？」
「じゃあ、ママって呼んでよ」
「ママですか」
「ママだよ、うん、私、ママ。」
彼女が実の母を、お母さんと呼んでいたのは知っていた。
だから、私を母と認めてくれる気持ちと
元の『お母さん』を大切にする気持ちは
混合すべきではないと思った。
そして、私は彼女と養子縁組をし、『ママ』になった。
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作者名：ゆうみ | 作成日時：2020年2月27日 11時
