さよなら代役【8人目】 (ページ18)

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進む明日を守りたい【琴子ママ】ページ18

進む明日を守りたい【琴子ママ】

私は高校生で母を亡くした。

その時の悲しみを、鮮明に今でも覚えている。

そんな悲しみを、両親分抱えながら
慣れない家で、暮らしていくなんて。

想像しただけで、気分が悪くなった。

そんな中、ジャニーさんから直々に、電話があった。

Aちゃんが、児童相談所に保護された。

そんな一報。

……虐待。

想像よりも遥かに悪い現実に私は打ちのめされた。

でも、家族でもない私に出来ることは、何もなかった。

その後の8ヶ月間私は独自に、事務所と連絡を取り続けた。

Aちゃんは、転居のたびに事務所に
連絡していたからその情報だけは聞くことが出来た。

私はそのAちゃんの転居情報を
彼女から発せられる、最後のSOSのように感じていた。

『この環境から出たい。』

『いつかまた、お仕事がしたい。』

そんな意志を感じてしまった。

そして私は、火事の日から1年半後。

児相保護から4度目の、引き取り検討が
彼女の親族の中で、始まっていることを知った。

私はその時、一生独身であることを
薄々、自分で勘付き始めていた。

結婚という、制度自体の合わなさもあったけれど
自分自身が妊娠しにくい体質ということも分かっていたから
誰かのお嫁さんになる、なんてことは
望めないことが、分かっていた。

でも、私は、母というものにはなってみたかった。

父に、孫を見せたい気持ちはあったし
両親に、そうされたように誰かを愛したかった。

私はその時、35歳になっていて
人生の後半を決める、分岐点に立っていた。

そして、ある決断をした。

Aちゃんを、私が引き取ろう。

いや、母になりたいなんてそんな大それたことは言わないから
家族として、彼女を守ってあげたかった。

彼女を愛せない親族たちにたらい回されて
彼女が彼女の望む人生を送れない心配があるのなら

血のつながりがなくても
微力ながらも、彼女を支えたい私が
彼女を養子に取るのは決して間違った考えではないだろう。

それに、私は一般世帯よりは稼ぐことが出来ている。

金で解決できることなら、解決してしまおう。

そのために貨幣制度はあるはずじゃないのか。

そして、私は事務所から聞いていた今の住所を勝手に訪ねた。

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