さよなら代役【8人目】 (ページ17)

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それが君でした。愛し君でした。【琴子ママ】ページ17

それが君でした。愛し君でした。【琴子ママ】

私と彼女が出会ったのはAちゃんが
事務所に入りたての頃の母娘役がきっかけだった。

Aちゃんは業界にも慣れていなくて、手探りだったけれど
今と同じように、飲み込みも早くて立派な子役さんだった。

映画だったこともあって私達は、長い間一緒に居た。

本当に綺麗な子供だったことをよく、覚えている。

それにみんなを笑わせてくれてムードメーカーで。

堅物な監督のいるぴりぴりしがちな現場も
彼女のおかげでスムーズに撮影は進んだ。

私達は、年の離れた友達になって
クランクアップした後も連絡を取り合った。

子供のいない私には、この子の学校の話や、
友達の話を聞くのが本当に楽しみで。

そんな日々が、一年ほど続いた。

でも、映画が封切られる頃、連絡が急に取れなくなった。

それから、半年もすると電話番号も使えなくなった。

私は、こういうこともあるだろうとも思った。

…まだ子供なのだし、忙しいのだろう。

でもそれでも、嫌な予感がした。

…そんなこと、する子なのだろうか？

堂々巡りの末に、私は父に頼んで事務所とコンタクトを取った。

私の父、青山響平はジャニーさんと古い友人だった。

そのつながりを使ってでも
何か、彼女に事情があるならば聞きたいと思ったのだ。

何もなく元気ならば、それはそれで構わなかった。

しかし予感は的中した。

彼女の父親が、自宅火災で亡くなり
母親も後を追い、今は、親族の家に
引き取られているという話を聞いた。

私との、連絡が取れなくなった時期とぴったり合っていた。

しかも彼女は、その親族の意向により
芸能活動を休止していると言う。

私は、唖然とした。

彼女の異変に、気づいてあげられなかったことが
ショックだった。

それに、あんなに才能のある子が
このまま辞めてしまうのも惜しくて仕方がない。

あんなに、楽しそうに演技する子を
私は、見たことがなかったから。

私のほうが、悔しかった。

事務所も見守るほかないのだ、と返してきた。

未成年の悲しい所だった。

それから2ヶ月ほど経った。

私は毎日、Aちゃんのことを考えていた。

たかが一度共演したまでと言えば、それまで。

でも、心配で仕方がなかった。

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