当たり前の景色【青】 ページ1
当たり前の景色【青】
おはよう、といつもの挨拶をした。
Aちゃんは、イヤホンを外さないまま、おはよ、と口を動かした。
Aちゃんは、きっと他グループの新曲を聞いているんやろう。
仕事が趣味というか、何というか。
Aちゃんは日本一の事務所担を自称している。
日々、この事務所の全てのグループの活動を研究中。
そのせいか、他のグループのファンからも支持されている。
いや、日本中の間違いかも。
……メンバーカラーは白。
男装の麗人のはずがスカート履くと女装呼ばわり。
踊れるのに、足が遅い。
そして、変に真面目。
「私は変な奴やろ？やから隙が有ったらあかん。
私は、私と周りの人を守る為に、完璧で居いひんとあかんねん」
そんなうちの、Aちゃんです。
こんなことばかり言うてるから心配にもなる。
この国で、Aちゃんの心をほんまに分かる人は、誰も居ない。
Aちゃんは特別で跡に続く人も居いひん。
勉強熱心やな、と誰かが褒めると茶化してしまうこの子を
僕たちだけでも、守ってあげたいと思うてる。
「あ、よかーまさん」
「なに」
「昨日ありがとう」
「ああ、うん」
「なんかあったん」
Aは、ご飯行ったの、と亮の声に、にこにこ返した。
信ちゃんとすばるくんが顔を見合わせて笑った。
細やかなことやのにそんなに嬉しそうにするから
なんだかみんな、可笑しくなってしまった。
「なんか平和や」
「なんやそれ」
「私のおかげやな」
「うっさいわ」
丸の変な感想に、大倉がツッコミを入れて
それに、Aちゃんがドヤっとした。
普通やない職種の更に普通やないグループが
存続している理由はAちゃんにあるのかも知れへん。
Aちゃんはいつもなんでも特別や。
普通なのは、小林っていう名字くらいな物やと思う。
初めて会うた日から大人びていて完成されていて、
それでいてそこから何も成長していないような面白い女の子。
誰でもみんな、この子が好きや。
気持ちのいいくらいの人たらしで
世界に愛された、神様のお気に入り。
僕たちは、奇跡の積み重ねでここに立っているけれど
その奇跡の一片は間違いなく、この小林Aや。
家族を大切に。
ファンを大切に。
メンバーを大切に。
事務所を大切に。
そんな彼女を大切にするのが、僕たちです。
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作者名：ゆうみ | 作成日時：2020年2月27日 11時
