さよなら代役【8人目】 (ページ7)

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「おかえり」いつものようにページ7

「おかえり」いつものように【A】

「ただいま」

「あ、遅かったね。」

久々に、実家に帰省する。

家に居るのは、日本を代表する女優、と
世間では言われている私の母と、祖父だ。

通称ママとおじいちゃん。

…すみません、普通で。

「ちょっとお父さんも手伝ってよ」

「はいはい」

ママが、ソファでテレビを見ていたおじいちゃんにちくりと釘を指す。

私とおじいちゃんはバツの悪い顔をしながらキッチンへ向かった。

「最近忙しいみたいね」

「おかげさまでって感じだよ」

「この間見たぞ、ほらあのドラマ」

「お父さん熱心に見てたわよ」

「こと子もだろ」

「そりゃそうだけどさ。
でも、お父さん内容に付いてくのに必死で
大変だったじゃない」

「俺は、Aちゃんが映ってりゃいいんだよ
こと子の、ドラマや映画もそうだけどさ」

おじいちゃんが悪びれもせずにそう言って味噌汁を啜った。

「ママは今度舞台やろ？もうお稽古してるん？」

「そう。もう、台詞飛ばさないように一緒懸命」

そんなこと言っても、ママは完璧なはず。

高校生の時にスカウトされてから
第一線を走り続けてきた女優、それがうちの母、青山琴子。

ちなみに、本名はこと子。

私の目標であり憧れであり、大切な家族。

「おじいちゃん、一緒に観に行かへん？」

「デートだな」

「せやで」

おじいちゃんは、家でこそこんな
娘&孫溺愛ジジイだが本職は作詞家である。

今はほぼ引退ぎみだが、数々のヒット曲を打ってきた。

名前は響平。

一応「響く」と「琴」で音楽繋がりらしい。

実家に帰ると、心が安らいだ。

ここでは私は、ただの家族として存在できた。

何を失敗しても、何度喧嘩しても大丈夫だ、という事実は
私を本当の私に戻してくれる。

責任ばかりの人生でここだけが避暑地のような。

それに、3人ともこの業界に浸かりきっているために
苦悩も、共有出来ることも大きい。

だから帰れる時はなるべく帰って、顔を見るようにしている。

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