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仕事も一段落したので、私は給湯室にコーヒーを淹れに来ていた。りさとのじゃんけんに負けたから2人分。
「最近負けなしだったんだけどなー」
私の癖である独り言を言って何気なく振り返ると、そこには横山さんがいた。変なことを言ったわけではないが、独り言を聞かれたのではないかとプチパニックになった。いや、さっきの声のボリュームなら聞こえているはずだ。
しかし、横山さんは何も聞こえなかった様子で、コーヒーを淹れていた。
「何?」
「あ。いや。なんでもないです。すいません」
横山さんをずっと見ていたのがバレたらしく、淹れているコーヒーを見たまま私に質問した。
そしてコーヒーを淹れ終えると、そのまま給湯室を出た。
焦った。というか、やっぱ冷ややか。怒ってはないよね?
あんな先輩と仲良くできる人の特徴って何なんだろうと、私は不思議に思った。
「安田くんは横山さんにかわいがられてるよね。やっぱり2人とも関西出身で気が合うみたいだし。」
りさにさっきの出来事を話してから、安田くんと横山さんが一緒にいるのを思い出した。その時はクールな横山さんも、ふと笑顔を漏らしていた。
私たちと同期の安田くんは人の懐に入るのが上手いから、あのクールな横山さんとも仲良くなれてるんだと思う。どこからその術を学ぶんだろうか。
向かいに座っている安田くんを見ながら考えていると、安田くんと目が合った。
「何ー?なんか付いてる?笑」
「ううん。何でもない。ごめんごめん。笑」
あの笑ったとこだろうな。皆から好かれるのは。私にはいつその術を習得できるんだろうかと心の中で嘆いていた。
そしてパソコンの中でも見事に嘆いていた。知らないうちに左手がキーボードのAを押し続けていたらしく、画面にあああああああ…と連なっていた。連なった「あ」の行列を消しながら、私の意識を仕事に取り戻した。
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ryochan(プロフ) - はじめまして。続きがとても楽しみです。 (2018年8月8日 12時) (レス) id: f4adbf8565 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あいわいこ x他1人 | 作成日時:2018年8月3日 16時