○ ページ3
人間本当の恐怖を感じた時は叫べないらしい。
噂程度の知識が自分で立証されてしまうだなんて誰が思っただろう。
「おーい、俺はただここが何処であんたが誰か知りたいだけなんだ」
目の前の男は上裸に短パン、大ぶりのネックレスに派手な帽子。暗く顔まではよく見えないがシルエットだけでもだいぶ奇天烈なファッションなのは確かだ。
恐怖で脳が麻痺してしまったのか、呑気にもそんな観察をしてしまっているが私は一体これからどうなるのか。殺されるのか。
この人は誰で何でうちにいるのか。
「悪ィ、怯えさせる気はなかったんだけどよ。俺、海に落ちたと思ったんだけど気がついたらここにいたんだ。あんたなんか知らねェか？」
海に落ちてここにいた？
どんな状況だよ私が聞きたいわ。海から何キロ離れてると思ってんだ。埼玉だぞここ。
とにかく危害を加える気は無い、自分も状況が分からないということを必死に説明する彼に少し慣れたのか、徐々に体の自由が戻ってきた。
『…あ、あの…』
「お！喋れるようになったか！」
『ッ……え、と…まず、お名前を伺っても、いいですか…』
「そういえば名乗ってなかったな！俺の名はエース！よろしくな！」
どっからどう聞いても横文字の名前。
それにしては流暢な日本語をハキハキ喋る彼に脳内のハテナがまたひとつ増えた。
『エース、さん…私は、えっと…Aと言います。先程ここはどこかと仰ってましたがここは私の家です』
「やっぱそうなのか。見たことないモンばっかだけど家っぽかったからそうかと思った」
まだ足に力が入らず腰も抜けたままなのでエースさんに頼んで電気をつけてもらう。
あ、土足じゃん靴脱いで…
電気がついて、再認識したことがあった。
『え、エースさん…その怪我…』
彼の顔には数箇所の切り傷がありそこから血が伝っていた。これがあの鏡の血の正体だろうか。
「あーこれな、起きた時についてた。俺そこの鏡のとこで寝ちまってたみたいで」
もしかしてこれのせい！？え、私のせいかこれ。
割れた鏡の上で寝てればそりゃ怪我もするわな。
とりあえず手当しないと…
幸い救急箱は動かなくても手の届く範囲にあったのでそれを渡す。本当は私がやるべきかもしれないがそんな勇気は無い。
ちょっと貸してくれ、と割れた鏡の欠片を使って自分の顔を手当していくエースさん。
慣れたような手つきの彼に一体何者なのだろう、と最初の疑問が頭に戻ってきた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 251人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葵(プロフ) - めりーさん» めりー様コメントありがとうございます。全部ありがたいお言葉すぎて感涙です…！今後とも楽しんで読んでいただけるように頑張りますのでよろしくお願いします！ (2023年3月13日 9時) (
レス) @page32 id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
めりー(プロフ) - 続編行くんですねっ！😆✨とても大好きで読ませてもらってます！文才がすごくて憧れます😌🙏💫応援してます🔥ꉂꉂ📣 (2023年3月11日 22時) (レス) @page46 id: 4d1819db53 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - ココナッツさん» ココ様！前作に引き続きコメントありがとうございます。笑っていただけて光栄です笑。これからの展開もぜひ楽しんでいただけると嬉しいです！今後ともよろしくお願いします。 (2023年2月26日 7時) (レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 十六夜紅葉@斎藤一推しさん» 十六夜紅葉様コメントありがとうございます。応援とても励みになります。これからもよろしくお願い致します！ (2023年2月26日 7時) (レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - 葵様こんばんは。新作早速一気読みしてしまいました´`* 私5話の｢あ。結構馬鹿だ、この人。｣が好きすぎてつい笑ってしまいました(笑) 夢主さんとトリップしたエースさんのこれからが楽しみで仕方ありません…!! 今作も応援してます (2023年2月25日 23時) (レス) @page5 id: a1f85287cc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：葵 | 作成日時：2023年2月23日 12時
