○ ページ13
エースさんの食いっぷりはまぁすごいもので、数分…いや数秒で完食してしまった。ついでに私のコロッケもひとつあげたらとても喜んでいた。
食べるの好きなんだな。
ご飯を食べ終わるとまた再びエースさんは気まずそうな雰囲気になった。まぁ確かに、彼にしてみれば1人で生きていけると啖呵切って出ていった家だ。気持ちも分からなくは無い。
でもいくら子供の時に山で生活できたからってここは寧ろ山より過酷なお金の世界だ。住むところも食べるものも着るものも全て金がなければ手に入らず、固い法律や法令が居場所を追いやる。
サバイバルは得意な彼と言ってもこの冷たいコンクリートジャングルでは金と知識の前に成す術などないだろう。
『エースさん』
ぴくっと肩を震わせる。そんなに身構えなくてもいいんだけどな、と思いつつ言葉を続けた。
『困ってますよね』
「…あぁ」
『なら私も一緒に困ります。
だから、私が困った時は一緒に困ってください。
少しのあいだ、うちに居ますか?』
「ッ…で、でも」
『正直、うちはお金持ちじゃないです。
だから裕福な暮らしはさせてあげられません。我慢もさせるだろうし、ご飯もお腹いっぱい食べさせられないです。本当に最低限のことだけです。
それでもいいですか?』
「十分だ…ッ!!」
『じゃあ、一緒に』
「待ってくれ、お前が言うのはやっぱり違う!俺から言わせてくれ。
A、もう一度頼む。俺をしばらくここに置いてください。何でもします、お願いします」
ダイニングチェアからいきなり立ち上がったかと思うと膝をつき、頭を下げる。
本当にまっすぐで、義理堅い人なんだなと感じる。
『もう、そこまでしなくていいですよ。顔あげてください。
一緒に困っていきましょ、ね?』
「恩に、きる…!」
今にも泣きそうな彼の頭をポンポンと撫でてやる。
こうして私とエースさんの不思議な共同生活が幕を開けたのだ。
250人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葵(プロフ) - めりーさん» めりー様コメントありがとうございます。全部ありがたいお言葉すぎて感涙です…!今後とも楽しんで読んでいただけるように頑張りますのでよろしくお願いします! (2023年3月13日 9時) (レス) @page32 id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
めりー(プロフ) - 続編行くんですねっ!😆✨とても大好きで読ませてもらってます!文才がすごくて憧れます😌🙏💫応援してます🔥ꉂꉂ📣 (2023年3月11日 22時) (レス) @page46 id: 4d1819db53 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - ココナッツさん» ココ様!前作に引き続きコメントありがとうございます。笑っていただけて光栄です笑。これからの展開もぜひ楽しんでいただけると嬉しいです!今後ともよろしくお願いします。 (2023年2月26日 7時) (レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 十六夜紅葉@斎藤一推しさん» 十六夜紅葉様コメントありがとうございます。応援とても励みになります。これからもよろしくお願い致します! (2023年2月26日 7時) (レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - 葵様こんばんは。新作早速一気読みしてしまいました´`* 私5話の「あ。結構馬鹿だ、この人。」が好きすぎてつい笑ってしまいました(笑) 夢主さんとトリップしたエースさんのこれからが楽しみで仕方ありません…!! 今作も応援してます (2023年2月25日 23時) (レス) @page5 id: a1f85287cc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:葵 | 作成日時:2023年2月23日 12時