=24= ページ35
『…兄弟？』
「あぁ、全身濡れた俺たちを見た時の対応があんまり早かったからもしかしたらと思ってな。深い意味はねェよ」
そう言われてハッとした。
無意識だったが言われてみれば昔、同じことをしていた。
ルフィ、サボ、エース。
あの悪ガキ組は晴れだろうと雨だろうと泥だらけになって帰ってきた。雨の日は特に酷くそのまま家に入れようものなら天井にまで泥が着く勢いだった。
玄関で着替えさせ、タオルを投げつけて風呂に押しやった記憶が今になって蘇ってくる。
…あれらと2人を重ね合わせてしまったのならちょっと申し訳ない。
『えぇ、故郷にいた頃弟が3人いました』
「そうか、俺も弟が一人いる。故郷に残してきてここには居ないが」
『！…一緒ですね』
「お前、姉だったのかよい」
『何、姉に見えない？』
「ナースたちといるのを見て末っ子っぽいと思っただけだよい」
『ふーん…？でも確かにイゾウさんはお兄ちゃんぽいかも…』
「兄を通り越して父親くらいの歳だがねい」
「25ならまだいけるだろ？」
「36だろうが」
どうやら私が年齢間違えたのも周知の事実らしい。
でもこう会うとマルコも大分若く見えるけどイゾウさんはもっと若く見えた。写真で見るより美人だし。
イゾウさんの弟さんはどんな人だろう。
お兄ちゃん、かぁ……
『………イゾウ、お兄、ちゃん』
「ッ〜〜〜〜〜！？」
「堕ちたねい」
「…ッあぁ、あれには敵わん」
『私今なんか言っちゃった…？』
「無自覚かよい」
マルコにイゾウさんのことをお兄ちゃんと呼んだことを聞き完全に無意識だった私は両手で顔を覆った。
穴があったら入りたい。
『…す、すみません』
「構わない、むしろそれで呼んでくれ」
「いや、その前に俺が兄だろい」
「父親くらいの歳なんだろう？」
「同い年だろうが！」
いつも余裕のあるマルコがイゾウさんを相手にすると後手に回っているのが少し面白かった。
しばらく2人を眺めていたが意外と長引き終わる様子がない口喧嘩。どうしたものかと思案しているとナースのひとりが近づいてきて耳打ちされた。
『はっ恥ずかしいよ、無理ッ！』
いける、とナースはウィンクにグッと親指を立て、離れていった。目線を戻しても口喧嘩はまだ終わっていないようだった。
『イゾウお兄ちゃん！マルコお兄ちゃん！喧嘩はダメッ！！』
2人の動きはピタッと止まり、ナースの言った通り1発KOだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 230人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：葵 | 作成日時：2023年1月12日 8時
