=34= ページ45
「寝ちまったねい」
「本人は無理してないと言っていたが、ずっと部屋の中にいたんだ、色々あって疲れたんだろう」
「どんな怖がられ方するかとこっちがビビってたが意外と度胸あんのな。ティーチにも話しかけてたし」
「根は強いやつなんだ。きっと攫われる前はもっとこういう性格だったんだろい。ちゃんと根っこは枯れてなかったってことだな」
アイリンを見る3人はもう立派な兄の面構えだった。
＊
初めての食堂訪問から私は部屋の外に出ることが増えた。
コンコン
「準備できたかよい」
今日はいつもの黒フードではなく、ナースに貰った綺麗な格好で髪も整えた。今日会いに行く人はそれだけの人物だ。
「緊張してんのかよい」
『してるよ…だって長く乗せてもらってるのに初めて会うもん。
船長さん』
「ま、そんな構えなくても大丈夫だよい」
あの時はもう記憶が朧気であまり覚えてないけど、私を助けてくれた人。
やっと会える。
「親父、入るよい」
失礼します、と声をかけ中に入る。
え、人…？
その奥にどっかり腰をかけていたのは人間かと疑うくらい大きく、圧倒的な迫力を放っていた。
「来たか、小娘」
『ッアイリンと申します。
ご挨拶が遅くなり大変申し訳ありません。この度は私を助けていただき、船において下さりありがとうございます』
「グララララ、随分出来のいいガキだなァ。うちの連中にも見習わせてェぐれェだ。頭あげな、小娘」
ゆっくり下げた頭を持ち上げていく。
緊張や恐怖とは何か違うような、でも体を動かすことを許されないようなそんな感覚があった。
「いいツラになったじゃねェか。心の方はどうだ、ちったァ男に慣れたか」
『はい。マルコもイゾウも、みんな優しい人たちばかりなので。本当感謝してもしきれません』
「うちの馬鹿野郎共を優しいなんざおめェ、物好きだなァ。
慣れたってんならおめェこれからどうする」
このままここにずっと居られるわけじゃない。
でも私は船を降りてもお尋ね者。生きていけるとは思えない。
「迷ってんなら、選択肢をくれてやる。
このまま船を降りるか、
ナースとしてこの船に残るか
ナース以外に女は乗せねェ主義だ。船に残りてェならナースになれ」
『……少し、考える時間をいただけませんか』
「構わねェ。マルコ達にやった時間は半年。ゆっくり考えたって問題ねェよ」
『…ありがとう、ございます』
その日はそのまま部屋に戻った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 230人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：葵 | 作成日時：2023年1月12日 8時
