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文通を初めて早1ヶ月。
アイリンが船に乗ってからはもうすぐ3ヶ月が経とうとしていた。
文通の頻度はまちまちでマルコの忙しさによっては一日で返す日もあれば2、3日返せない日が続く日もあった。
それでもアイリンは返事を貰う度すぐに嬉しそうに開封し、読み終えると直ぐにまた返事を書いた。
その姿が健気すぎてナースたちは毎回悶絶していた。
その頃にはもうアイリンの体力はほぼ元通りに回復し、部屋の掃除や片付けを手伝ったり、ナースに医学を教えて貰ったりしていた。
ある日の午後。
ティータイムにしましょう、とシャロンが声をかけるとはーい、と手を止め駆け寄ってくるアイリン。
「ねぇ、アイリン」
『なに？』
「そろそろ、会ってみる？」
頃合だと思った。
最初こそ緊張しながら書いていた手紙も今や友達に書くようにスラスラ笑みを浮かべながら書くようになった。
元々、手紙は直接会う前の準備段階、ゆくゆくは会いたいと本人も言っていた。
『私も、最近考えていました。
けど、いざ会った時冷静でいられるか、分かんなくて……』
「…その不安は当然よ。なら、冷静でいられる練習をしましょう」
『練習…？』
「いつもと違うことをしたり、違う状況に人は緊張するものよ。
逆に普段通りなら自然と緊張もしなくなる。でも何もなしに普段通りと言っても難しいわよね。
だから、これよ」
『…紅茶？？』
「そう。あなたが紅茶を入れてマルコをもてなすの。お礼もしたいと言っていたし、ちょうどいいと思うのだけどどう？
いつも通りに紅茶を入れる、それに集中しているほうが変に緊張しないで済むと思うわ。もちろん、私たちも一緒にいるから。
どうかしら？」
『…やりたい！』
「えぇ！そうと決まれば今日からやってみましょ！」
○
自室で仕事をしているとナースが一通の手紙を届けに来た。
書類整理に一旦方をつけいつも通りの封筒を開くと、中身はいつもと少し違う内容だった。
「…茶会？」
○月×日、--:--
もしご都合よろしければ午後のひとときに紅茶を振る舞わせていただけませんか？
これはつまり、初めての面会。彼女が会いたいと勇気をだして招待してくれた茶会だ。
…ついに、来た。
いや、何俺が緊張してんだ。
緊張してんのはアイリンの方だろうが。
それにしても、茶会だなんて。
ビッグマムでもあるまいし、こんなむさ苦しい船の上でそんな洒落た招待を受けるとは。
楽しみができたな。
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作者名：葵 | 作成日時：2023年1月12日 8時
