○ ページ8
視界に入ったのは、見慣れた天井だった。
失敗したと理解するには十分の光景だった。
切ったはずの首には包帯が巻かれ丁寧に止血されていた。
まだ続くのか、この地獄は。
命があったとはいえ血はそれなりに流しすぎたのか頭も体も動かない。
ガチャリと音を立てて開いたドアも、そこから入ってくる男にも目を向ける気力すら今の私にはなかった。
「起きたか…」
大嫌いな声が耳を掠めたが何も返さなかった。
実行する前からもう次はないと思っていた。
この男は同じことが二度通用する人間では無いから。
もう私の手元に刃物が渡ることも、片時も1人になる時間も与えられないかもしれない。
「……そんなに俺が嫌いか？」
『………………本当にそう思うなら、ほっといて』
「………ベビー5には謝った方がいい。相当取り乱していた」
そう言い残すと以外にもすんなり部屋を出ていった。
数分後、入れ替わりで入ってきたのはベビー5だった。
いつもは必ずノックしていた彼女がガバッと乱暴にドアを開き、入ってきた。
走ってきたのだろう息は上がり、髪も乱れていたがそんなのお構い無しに一直線に私のところまで来るとベッドの横で泣き崩れた。
「うわぁぁぁぁあん！アイリンのばかぁぁ！！死んじゃうかと思ったぁぁあ！！」
意外だった。
ベビー5とは特に仲がいいわけでもなかったし、去年からずっと私の世話という仕事も増やされきっと迷惑してると思っていたから。
ベビー5の泣き顔を見るのは別に初めてでは無いし、むしろ幼い頃から散々みてきたけどここまで取り乱して号泣するところを見たのは初めてだった。
『…どうして？
私が居なくなったところで別にあなたには関係ないじゃない。仕事も減ってむしろあなたも楽になるでしょう』
「やだぁぁあ！！居なくなるなんて許さないわ！！
死なないで！！！置いてかないでよアイリン！！！」
声を上げて私の手を強く握りながらベビー5は泣き続けた。
私にはその時のベビー5の感情はどうしても読めなくて、ただただその言葉に嘘偽りがないことだけがわかった。
あの言葉がその時の私に響いたかといえばそんなことはなかったと思う。
でもその後、何度死にたいと思ってもあの日のベビー5の顔と必死な声が私を死なせてくれなくなった。
未だにどうして私なんかのためにあそこまで涙を流したのかは分からない。
でも今思えば確かに私はベビー5に救われていたんだ。
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葵(プロフ) - 桜日和さん» 桜日和様コメントありがとうございます！どうくっつけるか迷いに迷いましたが無事2人を結ぶことが出来ました！今後ともこの作品をよろしくお願い致します！ (2023年1月10日 14時) (
レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
桜日和 - コメント失礼します。おめでとう。彼女ちゃん。ロー。 (2023年1月7日 11時) (レス) @page36 id: ae0b8a4349 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - つばめさん» コメント再びありがとうございます！他のキャラとも少しですが絡むエピソードは考えていますので今後もお楽しみいただけたらなと思います！お読みいただいてありがとうございます！！ (2023年1月2日 0時) (レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
つばめ - ローさすがキャプテン最高 次も楽しみにしています ルフィ，キッド達も皆自由に動いてしまいますから彼女とロー他のクルー達が揃えばココだけは有る程作戦や指示に従える人達ですので他海賊記載は難しいかもですが頑張って下さい (2022年12月29日 11時) (レス) @page27 id: e61b67cd9c (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - つばめさん» つばめ様前作に引き続きコメントありがとうございます！前作では戦闘シーンが多かったので今作では色んなキャラと絡ませたりローと彼女ちゃんの絡みが沢山かけたらなぁと思ってます。これからもこの作品をよろしくお願い致します！ (2022年12月17日 16時) (レス) id: c7e0276671 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葵 | 作成日時：2022年12月6日 10時
