-35- ページ37
頭を撫でる優しい手に目を覚ました。
「起きたか？」
『いぞ、さん…？』
イゾウさんの布団の中にいることに変わりは無いが、先程のようにがっちりホールドされていることはなくなった。
結構寝てしまったようだ、イゾウさんの表情は少しだけ良くなったように見える。
「すまなかったな、お前さんにかなり苦労をかけたようで。腹のキズも…お前を守るはずの俺がこんな体たらくで言葉もねェ」
『そんなこと！…まぁ体調が悪かったのは言って欲しかったけど。それ以外イゾウさんに謝られる覚えはないよ。
いっつも守ってくれてるんだからたまには私に守らせてくれたってバチは当たらないよ』
「アイリン…ありがとうな…」
『ふふ…どういたしまして』
「あと、俺から引きずり込んでおいてなんだが若い娘が男にあまり隙を見せるな。隣の布団に戻れるか」
『えー、さっきは容赦なく引きずり込んでぎゅーってしてきた癖に』
無言になったかと思うとすっと布団から出ようとするイゾウさん。
『どこ行くの？』
「腹を斬る」
『何言ってんの！？』
待て待てと持てる力ありったけで押え付ける。あてててて。
なんとか布団の中に戻すことに成功はしたがムスッとしたままのイゾウさん。私は悪くないと思いたい。
『たまにはこんな日があってもいいじゃないですか？もう寒いから出たくない』
「後半が本音だろ」
はぁ、とため息が頭上に聞こえた。
「…お前が、無事でよかった」
『あんな奴らにくれてやれる命はないよ』
「じゃあ誰にならやれるってンだ？」
『親父』
「即答か。だが違いねェ」
『イゾウさんは弟さんのためにも死んじゃダメだよ』
「！あぁ、そうだな…」
『ここにも妹がいること、忘れないでね』
「そういや、もうお兄ちゃんとは呼んでくれねェのかい？」
『うげ……』
この船に乗ってまもない頃完全に無意識にポロッとこぼしてしまった言葉を今でも引き摺ってくる。
昔のことをいつまでも引き摺る男はモテないぞ。イゾウさん以外は。
仕方ないなぁ。
『…いつもお疲れ様、イゾウお兄ちゃん』
「！ッ………妹が可愛い…」
『えへへ、お兄ちゃんはいつでもかっこいいよ』
「も、もう十分だ…」
『えぇ？なんで？？お兄ちゃん♡』
「アイリン！」
こいつら一応病人と怪我人だよな？？
様子を見に来た船員はまた微笑ましくその光景に涙した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 321人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葵(プロフ) - なこさん» なこ様コメントありがとうございます！キュンしていただけて何よりです！エースとのお話、まだまだお届け出来ればなと思ってますのでこれからもこの作品をよろしくお願い致します！ (2022年12月26日 8時) (
レス) id: c7e0276671 (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - いつも楽しませていただいております！！ついにヒロインがエースに想いを伝えて♡キュンさせて頂きました♡♡♡これからも応援しています！！ (2022年12月25日 22時) (レス) id: 1d7515ff1e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：葵 | 作成日時：2022年12月4日 17時
