○ ページ3
目を覚ました時、知らない天井が見えた。
床で眠ったはずなのに随分床が柔らかい…
『…ん…？』
「あ、起きたか。お前寝るならベッドで寝ろよ、倒れてるのかと思ってビビったぞ」
あぁ、エースの部屋だったなここ。つまりこれはエースのベッド…
エースのベッド！？
『ふぉあッ！し、失礼しましたッ！！』
「…？何してんだ、お前」
『や、家主を差し置いてベッドに寝るなんて…ご、ごめん！』
「ははっ俺が寝かせたのに謝んなよ。俺のベッドで悪ィな、落ち着かねェか」
『え、あ…いや……』
「…俺もそうだった」
『へ？』
懐かしそうな笑みを浮かべるエースに間抜けな声が出た。
「お前に拾ってもらった日、なかなか寝付けなくてよ。何時間も布団から出たり入ったり繰り返して、疲れて寝落ちしちまったのは朝になる頃だった」
そういえば初日はいつ起きてくるんだろうな、って思いながら仕事行ったっけ。置き手紙をして出勤した記憶がもう一ヶ月前だと思うと時間の流れが早く感じられた。
エースもこんな感じだったのか。
そりゃそうだよね、彼はずっとここで生活してたんだ。私の家とここじゃもう一から百まで全てが違うと改めて感じた。
本当に、よく文句も言わず生活してくれたな。
『エース、ありがとうね』
「！？な、何だ急に」
『いや、なんか…こんなに違うところで生活してたのに私の家で嫌な顔一つしないで適応してくれたんだなって』
「？嫌な顔なんてしねェだろ。Aのそばにいて嫌なことなんてひとつもなかった」
グサッ
良心を抉る優しい言葉だ。今の私には殺傷能力が高すぎる。
私なんてこの船乗った瞬間から嫌な顔してただろうに。ごめんなさい、本当に。
このエースの優しさに報いる日は来るだろうか。そのためにも一刻も早く慣れなくては。
『エース！』
「な、なんだよ今度は」
『連れてって』
「？」
船長さんのところに。
＊
子鹿の足で何とかたどり着いたその部屋の扉はありえない大きさだった。
「大丈夫か？本当に入るぞ？」
『ウ、ウン…大丈夫デス』
「やっぱ辞めとくか？」
『いや！行きマス！！』
「お、おう」
見たことないほどの巨大扉をノックして、エースが中に声をかけながらそれを開いた。
失礼します、と我ながら震えた情けない声で小さく一礼し、中に入った私はその瞬間に言葉を失ったのだった。
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葵(プロフ) - 十六夜紅葉@斎藤一推しさん» 十六夜紅葉様、前作に引き続きコメントありがとうございます。応援とても励みになります！これからも楽しんでいただけるようなお話を更新していきますので宜しくお願い致します！ (2023年4月1日 21時) (
レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
十六夜紅葉@斎藤一推し(プロフ) - 続編おめでとうございます！面白いですね！これからも更新頑張ってください！！ (2023年3月31日 9時) (レス) id: 25ee4b6236 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葵 | 作成日時：2023年3月30日 13時
