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目が覚めた時、その部屋は暗かった。
薬品の匂いが鼻を着いて、自分の腕には管が刺さっていた。それを辿ってみれば点滴が目に入り、そこが病院であることを示していた。
近くに置いてあった置時計を見ると3/27、AM3:30の表示。
私が夢で目を覚ましたのが2時。エースとはかなり外で話していたから、きっと最後の記憶からすぐに目覚めたのだろう。
…タイミング、最悪だな。
さっきまで触れていた自分の頬に手を重ねてみる。
私の手じゃ、温度が足りないな。
もう眠れる訳もなく、この2週間のことを振り返っているとじわじわ空が白み始め夜が明けた。
次第に病室の外に足音が聞こえ始めこちらの生活が始まる音が耳に入ってきた。なんだか、忙しない。向こうの海はゆっくりとただ波をうっていたのに。
コンコン
「おはようございますー……えっ！？」
『…お、おはようございます』
「い、意識が戻られたんですね！！よかった！」
なんだか、胸の奥が鉛のように重い。向こうにいた時は感じなかった重さだ。
主治医と話をしたり、昼過ぎには警察が来た。その後には相談していた弁護士さん。
似たような話を聞き、似たようなことを繰り返し話していればまた空が赤く染まり、陽が落ちた。
全員に目覚めてよかったと言われた。でもそれは私があのまま死んでいたら払われなかったお金、面倒になっていた手続きがあるからだ。
私は目なんか覚ましたくなかったよ。
たった一日、数時間しか離れてないというのにだめだな。
もう会いたいよ、エース。
＊
そして、こっちに戻って1ヶ月ほど過ぎた。
ようやく諸々の手続きが終わる。
『向こうでパパによろしくね』
A家之墓
そう記された墓石の前に手を合わせ母の骨はその寺の住職さんによって納骨された。
涙ももう流れなかった。ただただ、作業をするように終わったその儀式に私も随分心が無くなったものだと乾いた笑いがこぼれた。
これからのすべきことをこのひと月ずっと考えていた。
向こうに戻った時、私に必要な能力を向こうに戻るまでに身につける。向こうの知識をこちらで知ることはどう考えてみても難しい。
能力の習得もこちらでは能力が使えないから不可能だ。
ただ、向こうで生き抜くための体力、脚力、持久力…今の私には圧倒的に足りてない。
次の13日の金曜日は11月13日。
私の人生、最後になりうる7ヶ月が幕を開けた。
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葵(プロフ) - 十六夜紅葉@斎藤一推しさん» 十六夜紅葉様、前作に引き続きコメントありがとうございます。応援とても励みになります！これからも楽しんでいただけるようなお話を更新していきますので宜しくお願い致します！ (2023年4月1日 21時) (
レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
十六夜紅葉@斎藤一推し(プロフ) - 続編おめでとうございます！面白いですね！これからも更新頑張ってください！！ (2023年3月31日 9時) (レス) id: 25ee4b6236 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葵 | 作成日時：2023年3月30日 13時
