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温かい珈琲の苦味が喉を通り、体に染みた。
俺は自分が見たもの、聞いたもの、体験したことの全てをマルコに話した。順序もまとまりも無いような話を彼は黙って珈琲を啜りながら聞いていた。
「確かに、にわかには信じがたい話だねい」
「…そうだろうな」
「でもお前がそんな具体的な冗談を吐けるようなやつでもねェってのも知ってるつもりだ」
「ッじゃあ信じてくれるのか!?」
「…そうとも言えねェよい。お前の夢だって言われた方がまだ信じられる」
「夢なわけねェ!俺は覚えてんだ!Aの体温も、匂いも、声も全部、ちゃんと覚えてる!!」
「だから落ち着けよい。確かに夢にしちゃできた話だ。
まぁ、仮にその話が事実だったとしてお前はそのAっていう女を助けてェんだな?」
「そうだ!」
「…海に落ちてその異世界とやらに行ける可能性なんて100回やっても行けるとは限らねェ」
「なら101回やればいいだろ!」
「そういうこと言ってんじゃねェよい。お前も本当はわかってんだろ」
「ッ…」
俺もガキじゃねェ。
海に落ちるだけで向こうに行ければ苦労しない。でもこれはきっとそんな簡単な事じゃない。最初からわかってたことだ、こっちに戻れば二度と向こうには行けなくなるかもしれない。
二度とAと会えなくなるかもしれない。
実際一度海に落ちてもダメだった。
本当に、もう……
「その子を本当に助けたいなら死ぬな。ただ死ぬ気でその世界への行き方を調べろ。
手がかりが本当に見つかるかは分からねェが…助ける前にお前が死んだら元も子もねェよい」
「ッマルコ…!」
「それにお前の話が本当ならその子は俺たちにとっても恩人だ。俺も調べてみるよい」
「マルコーーーーーッ!!」
「抱きつくな!!」
マルコの言う通りだ。
俺はまたAに会うまでは絶対に死ねねェ。
何がなんでもまたあの世界に戻ってやる。
もう海に飛び込もうとするなよ、とお灸を据えられ最初に目が覚めた自室に戻ってきた。
もう一度あの世界のことでも考えるか、とベッドに寝転ぼうとした時、その白いシーツの上にあるものを見つけた。
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るな - ジェトジェトの実最高すぎますめっちゃ笑いました!笑 お話も面白いです♡ (1月4日 5時) (レス) @page44 id: 48ff4530aa (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - しのさん» しの様コメントありがとうございます。ありがたすぎすお言葉です!これからも世界観を壊さず読みやすいお話を心がけて頑張りますのでよろしくお願いします! (2023年3月21日 7時) (レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
しの - 世界観が良くて話も読みやすく面白くて好きです!特に夢主ちゃんの優しさと健気さに心打たれました。更新ゆっくり待ってます! (2023年3月19日 22時) (レス) @page17 id: 47a7886cb6 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - まるさん» まる様ご指摘ありがとうございます。修正致しましたがまたなにかお気づきのことがあればご指摘頂けるとありがたいです。今後ともよろしくお願いします! (2023年3月15日 11時) (レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 黒豆粉さん» 黒豆粉様、コメントありがとうございます。今後の展開も楽しんでいただけるように頑張りますので引き続きよろしくお願いします! (2023年3月15日 10時) (レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葵 | 作成日時:2023年3月12日 14時