3/13(金) ページ32
目が覚めると知らない景色だった。
そんな漫画みたいな状況が自分に降りかかるなんて思わなかった。
『うぅ…寒ッ…』
そして自分の格好に驚愕。
ボロボロの下着姿、そりゃ寒いに決まってる。
ここはどこかとか私がなんで生きてるかとか分からないことだらけで起きて早々頭が痛いがまずはこの格好を何とかしなければ。
なぜならここは外だからだ。
細く見える空、そのほぼ真上に月が雲に隠れつつ浮かんでいる。真夜中というお陰で寒いには寒いが人に見られなかっただけ幸運と思うのはこの世の不運を一気に体感したからだろうか。
とにかくなんでもいい、布でも紙でも体を隠せればもうなんでもいい。何かないか。
薄暗く空き瓶のころがった治安の悪そうな路地裏。きょろきょろ当たりを見回してみると丁度いいくらいの大きめなボロ布があった。
これでいいじゃん。ラッキー。
その薄手の布を手に取り、折り込んだり、体に巻き付けたりしてワンピースに見えなくもないくらいの簡易お洋服を作ることに成功した。
ボロ布だし、今の私は煤けて怪我もしている。これはこれで貧民街の孤児のような格好だな、とため息をついた。何もないよりはマシか。
それはそうとして、とにかく服は手に入れた(？)。
次はこの状況を整理しなくては。
私の最後の記憶は火事の中息が苦しくなって、時計とか色んなものが音を立てて落ちてくる光景だ。あそこで死んだはず。こんな汚い路地裏で目を覚ます意味がわからない。
あぁ、これはまさか…
私の中にひとつの仮説が出来上がろうとしていた。
それを確認するためにも外に出てみるか、酷い格好のままだけどこの時間ならまだ人もそう多く出歩いていないだろう。
ジャラ…
立ち上がって路地を出ようと踏み出した時、後ろから何かが崩れるような音がした。それはちょうどこの布があったあたり。
月を隠していた雲が流れさり、月明かりがその正体をゆっくり照らしていく。
私は目を剥いた。絵本の中でしか見た事のないものがそこにあったからだ。
それは宝箱だった。
蓋が閉まりきらず、ちらりと中身が覗いている。さっきの音はその中から複数のコインが溢れて落ちた音だったのだろう。
待って、この布これを隠しておくための…？？
あまりの衝撃に私は後ろから近づいてくる複数の足音に気がつけないままでいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 256人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るな - ジェトジェトの実最高すぎますめっちゃ笑いました！笑 お話も面白いです♡ (1月4日 5時) (
レス) @page44 id: 48ff4530aa (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - しのさん» しの様コメントありがとうございます。ありがたすぎすお言葉です！これからも世界観を壊さず読みやすいお話を心がけて頑張りますのでよろしくお願いします！ (2023年3月21日 7時) (レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
しの - 世界観が良くて話も読みやすく面白くて好きです！特に夢主ちゃんの優しさと健気さに心打たれました。更新ゆっくり待ってます！ (2023年3月19日 22時) (レス) @page17 id: 47a7886cb6 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - まるさん» まる様ご指摘ありがとうございます。修正致しましたがまたなにかお気づきのことがあればご指摘頂けるとありがたいです。今後ともよろしくお願いします！ (2023年3月15日 11時) (レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 黒豆粉さん» 黒豆粉様、コメントありがとうございます。今後の展開も楽しんでいただけるように頑張りますので引き続きよろしくお願いします！ (2023年3月15日 10時) (レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：葵 | 作成日時：2023年3月12日 14時
