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3/12 19時
最初に紙に異変が起こったのはいつもあいつが帰ってくる時間だった。
「ッマルコ!!どうしよう、これ…!」
ちりちり、と端の方から燃え始めたのだ。
今まではただくしゃくしゃになったり、髪の色味や質感が変わったりすることはあったが生命力を表す大きさは何も変わらなかったのに。
Aの身が危ない…!
「…これは」
「俺ッ…くそ、なんで…!!助けにいきてェのに!!」
「落ち着け…と言っても落ち着いていらるわけねえか。
酷なことを言うが、エース。このビブルカードが本物だとしてこのまま燃え続ければ、この勢いのままじゃ…
この子の命はあと持って数時間だ」
その言葉に目の前が真っ暗になった。
数、時間?
あんなに元気だったAが病気で死ぬはずねェ。絶対に他の人間が関わってる。
十中八九、あのクソ野郎だろうが。
待ってくれ、俺はまだそっちに行く方法も見つけてないのに。まだ何も伝えきれてないのに。
俺のいないところで死ぬなんて絶対に許さねェよ、A…!
俺はマルコの部屋を飛び出すと誰の制止も聞かずに海に飛び込んだ。息苦しさと薄くなる意識の中、Aを絶対に助けるという意思だけは確実に持っていた。
目を覚ましたのは11時をすぎていた。
また、だめだった。
見覚えのある部屋に落胆と焦燥感が押し寄せる。
いや、それよりもビブルカードは!?
「探し物はこれかよい」
「あぁ!そ、れ…ッ」
言葉を失うしかなかった。
元あった紙のもう10分の1も残っちゃいない。本当にマルコの言う通り刻々と目の前でAの命は削られていた。
危険な状況にいるというのは見るからに明らかだというのに、どうして俺はこんなところで指をくわえてそれを見ることしか出来ないのか。
惚れた女ひとり、守ることすら出来ないのかよ、俺は。
何が俺が守るだ、指一本触れさせないだ。本当に口だけの男じゃねェか。
壁を殴り付けても、床を蹴りつけても何も変わることは無い。
それでも黙って見てはいられないほどやるせなくて、悔しくて、苦しかった。
「待て!頼む、お願いだからA!!死ぬな!!!」
大きかった紙は半分になり、またその半分になり、手のひらサイズまで小さくなり、今ではもう指先に乗るほどに燃えていた。
「やめろぉぉぉおッ!!」
最後の一欠片が消えようとする時、時計は12時を回っていた。
そう、3月13日の金曜日を迎えていた。
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るな - ジェトジェトの実最高すぎますめっちゃ笑いました!笑 お話も面白いです♡ (1月4日 5時) (レス) @page44 id: 48ff4530aa (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - しのさん» しの様コメントありがとうございます。ありがたすぎすお言葉です!これからも世界観を壊さず読みやすいお話を心がけて頑張りますのでよろしくお願いします! (2023年3月21日 7時) (レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
しの - 世界観が良くて話も読みやすく面白くて好きです!特に夢主ちゃんの優しさと健気さに心打たれました。更新ゆっくり待ってます! (2023年3月19日 22時) (レス) @page17 id: 47a7886cb6 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - まるさん» まる様ご指摘ありがとうございます。修正致しましたがまたなにかお気づきのことがあればご指摘頂けるとありがたいです。今後ともよろしくお願いします! (2023年3月15日 11時) (レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 黒豆粉さん» 黒豆粉様、コメントありがとうございます。今後の展開も楽しんでいただけるように頑張りますので引き続きよろしくお願いします! (2023年3月15日 10時) (レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葵 | 作成日時:2023年3月12日 14時