師匠は語らない 弐 ページ3
「はい、これ。家に、あったから……」
師匠に手渡した、一冊の分厚い本。茶色く変色した背表紙に、黒い墨で書かれた『妖大全集』の文字。大分くたびれた表示からして、随分前のものだろう。師匠は戸惑った様子も見せず、それを微笑みながら受け取った。
「わざわざすまないな、『夜雲』。アイツは連れか？」
「ん。俺の部下、みたいな。俺、しょっちゅういなくなるし。」
「世話係りか……」
師匠は苦笑する。そして、今まで敵視していた少年の頭に手を置いて、土蜘蛛達にこういった。
「紹介が遅れたな、コイツは『夜雲』。私の、まぁ飲み仲間みたいなもんだ！」
「……飲み、仲間？」
「……紛らわしいわっ！！」
大ガマは叫び、土蜘蛛は赤っ恥をかいたと、顔を紅潮させた。その隣で魔慧は「暴れ大蛇じゃないのか……」と安堵する。
夜雲と呼ばれた少年は、３人をまじまじと見つめ
「ねぇ、俺。来るって言ったはずなんだけど……？」
「驚かせようと思ってだな」
「……性格悪。」
師匠のニヤリと何かを企んだような顔に、夜雲は口の中でぼそりと呟く。
夜雲にはそれが分かったのか、心底めんどくさそうな顔をして、縁側に足を踏み入れた。
「そうだ、黒鬼。今日はもう帰っていいよ。俺、今晩泊まるから……」
「え？夜雲、泊まるとか聞いてないぞ。」
「言ってない。」
「知らなくて当たり前みたいに言うなよ、お前。」
夜雲は草履を脱ぎながら振り返り、待機していた部下『黒鬼』に泊まることを告げる。すると今まで顔を俯かせて立っていた黒鬼が顔に青筋を立てて、夜雲に走り寄った。
「や、夜雲様！！困りますよ！童子様がまたお怒りになられます！！」
「ご機嫌取りなら、得意じゃないの？俺、あのジジイの顔見てると、いつか腐る。」
あからさまに不機嫌そうな夜雲に、黒鬼は「しかし……」と肩をすぼめた。それほどまでに、童子様と言う存在が恐ろしいのだろう。やがて黒鬼も諦めたように、煙になって姿を消した。
「はぁ……やっと羽広げられる……」
夜雲はそう呟いて、肩で大きく息を出した。師匠は消えていなくなった黒鬼を思い出しながら、やがて呆れたように眉を上げる。
「疲れるだろうな、あいつも。」
師匠の呟きを無視するように、夜雲は縁側から居間へと足を運んだ。そしてやや大きな声で叫ぶ。
「ねぇ、妖魔酒ないの？醜霊酒でもいいけど」
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♪ - ワイバーンさん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけて何よりです！小説、読ませて頂きますね!! (2016年4月3日 11時) (
レス) id: 31b9002b8a (このIDを非表示/違反報告)
ワイバーン - とても面白いですね！私も小説を書いているので宜しければ読んでみてください。応援してます！ (2016年4月2日 13時) (レス) id: da5fedacf4 (このIDを非表示/違反報告)
♪ - 星狐さん» ありがとうございます！！わざわざ読んで頂けるなんて、嬉しいかぎりです！これからも頑張りますね! (2016年3月28日 20時) (レス) id: 31b9002b8a (このIDを非表示/違反報告)
星狐 - こんばんは、星狐です。編集する前の師匠は語らないも読ませていただきました！夢主の口調変わりましたね。あっちもあっちで面白いので頑張ってください♪ (2016年3月28日 19時) (レス) id: 61c6a7506f (このIDを非表示/違反報告)
♪ - 続編まで見ていただき、本当にありがとうございます！これからも、応援やコメントの方をよろしくお願いしますね！！ (2016年3月22日 20時) (レス) id: 31b9002b8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：♪ | 作成日時：2016年3月20日 20時
