【歌い手】10年後、また。 (ページ3)

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「…ふー。お腹いっぱいだなぁ～～」

「あら～お粗末様でしたっ。」

「あまちゃんママのご飯はいつ食べても幸せになるね～」

「ふふっ。Aちゃんは美味しそうに食べてくれるから作りがいあるわ～」

「ん～～。ママさん好き～～」

「ほんと仲いいね2人」

Aは、いつも笑顔。

こうやってたまに目の前に現れてその場にいる人に笑顔を届ける。

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「ねぇ～あまちゃん～～。最近お歌の方はどーう？」

頬を赤く染めた彼女が話しかける。
小さく揺れているところを見るとだいぶ飲んだみたいだ。
お酒は強くない癖にお酒が好きな彼女が、両手で持ったカップを揺らしながら聞いてくる。

お酒をマグカップで飲むのがまた彼女らしい。

「んー？楽しいよ。最近無観客だけどライブもやらせてもらったしね」

「そっかぁ～～」

それは何より！なんて言いながら腕に絡みつく彼女。
従兄妹だとは言え、俺の心拍数はあがる。

「ほーら。くっつかないの～」

なんて言いながら赤くなる顔を隠すように彼女用の水をとりに席を立つ。

ちぇ～～と愚痴をこぼしながらソファーの上で膝を折りたたんで小さくなる彼女。
両手からマグカップを落としそうな体勢だ。

俺がリスナーさんから頂いた大切なものなんだから、割られたら困る。
彼女の手からマグカップを引っ張り出そうと手を伸ばす。

「数年前と今、どっちが楽しい？」

伸ばした手が止まる。

「…え？」

「ねぇ、あまちゃんは昔と今、どっちの自分が好き？」

顔を上げ、俺をまっすぐ見つめる目。

俺は上げていない睫毛が長いな。なんて考えていた。