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「あ、先生。紘下にいますけど一緒にご飯食べますか?」
いつまでも笑い合っているわけにもいかないためそう話を切り出す。
幼馴染同士話すことがあるのではないかと思っての提案であったが、鈴木先生はポケットから取り出した手持ちの灰皿に煙草を押し付け捨てると、煙を吐き出しながらクツリと喉の奥でかみしめるように笑った。
「いや、多分下野が嫌がるからいーよ。ありがとな。でもちょっと顔は見てから帰ろっかな。」
煙を吐ききったことを確認してから、先に梯子をさっさを下りて行ってしまう。
えーと思いながら上から見下ろせば、気付いたように先生は私を見上げ、なんの違和感もなく両手を広げた。
…はい?
「…え?」
「え?あぶねぇからさ、絶対受け止めるし。」
「いやいやいやいやいや。」
何なんだろうこの人は。天性の女タラシなのか否か。
普通やるとしたら手を貸す程度で、両手広げて受け止めるなんてしないはずだ。
さすがに恋愛経験ほぼない自分にもそれは分かる。
「それは…ないでしょ、先生。」
普通に梯子を降りようとしゃがんだとき
「見えるよ?」
そう忠告され慌てて立ち上がりスカートを押さえる。
それ教師が言っていいものなのか。真っ赤にゆで上がったような自分の顔を見つめニヤリと口端を緩めるその顔がうざい。
もういい。こんなうざい変態セクハラ教師、つぶれちゃえ。
少し後ろに下がってから、思いっきり助走つけて飛び降りてやる。
「おま、はぁ!!?」
さすがに怖くて目をぎゅっと閉じていれば、宣言通り力強い腕に受け止められた。
途端に尾行をくすぐる濃い煙草の臭いに顔をしかめる。
これ絶対タール数高い。
「お前、受け止めるとは言ったけど助走はつけんなよ女子高校生〜」
とか言いながらも楽しそうに笑ってんじゃんかよ鈴木先生〜と言い返せば
「まぁJKに抱きつかれて喜ばない男なんていないって。」と返された。
どこまでこの人は本音を隠さないのだろうか。でも逆にそこが面白い。
いい加減離れて、それから2人で元私がいた場所へと戻る。
おっそいぞ〜と唐揚げをほおばりながらゆっくりこっちを見上げた紘が面白いほどに固まり、ペットボトルに口をつけていた信長は、ペットボトルをすぐさまおろして正座し直した。
「お待たせぇ!!」
語尾にハートがついたような多分先生が出す精一杯の高い声でそうふざける。
咳きこむ紘の背中を摩ってあげながら、やっぱり変な教師を見上げる。
生徒の大事に腹を抱えて笑う先生なんて今までいただろうか。
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セラフ - 前作からのファンです!読んでいて凄く幸せです。応援してます! (2016年12月30日 13時) (携帯から) (レス) id: d3a6a115fa (このIDを非表示/違反報告)
杏(プロフ) - どこさん» ありがとうございます!更新速度遅くなってしまってて申し訳ないです;ぜひぜひこれからもお楽しみくださいませ! (2016年8月1日 2時) (レス) id: bce38d1340 (このIDを非表示/違反報告)
杏(プロフ) - 渡瀬 沙綾さん» お互いがお互いモヤモヤしてる片思いならではの空気感を感じ取っていただけているようでよかったです!すっかり夏のお天気となってきましたね。夏風邪などもありますし、気が抜けない季節ですね!心遣い感謝します^^ (2016年8月1日 2時) (レス) id: bce38d1340 (このIDを非表示/違反報告)
杏(プロフ) - 朱美さん» いつ達央さんがナンパしかえされるのかお楽しみにお待ち下さい^^コメントありがとうございます! (2016年8月1日 2時) (レス) id: bce38d1340 (このIDを非表示/違反報告)
どこ(プロフ) - 更新すごく楽しみにしていました!!ありがとうございます(*´∇`*)よーくさん優しくてほんと素敵ですね…たっつんの過去に何があったのかも気になります……! (2016年7月22日 4時) (レス) id: 94f97a8ba6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:杏 | 作成日時:2016年2月29日 23時