いと恋しき教師様！[鈴木達央]

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終わった。
なんかもう解き終わった瞬間に思った。
明らかに多い空欄をぼんやりと見つめていると、後ろから回答用紙が回されてきて、自分のも重ね前へと送る。どこが間違えたのかわからない、ではなく、もうなにもわからないレベル。
完全にお手上げ状態だ。
先生が回収した用紙の枚数を確認し終え、挨拶を簡単に済ませた瞬間に、みんなが一気に息を吐いた。
「っはああああつかっれたあああ」
「ねぇねぇこの問題さ…」
「あーまじやっべぇやっべぇこれ」
「はい捨てた。もう捨てた。もう知らない。」
「でもこれでテスト終了うぇえええい！どっか寄ってかえろーぜ！」
一気にいつもどおりかそれ以上のにぎやかさを取り戻していく中、自分はまだ魂が抜けた状態だった。
それもそのはず、今終わったばかりの教科、古典なのだから。
あれだけ教えてもらってたのに先生ごめん、と心の中で合掌して謝る。
「しまのんどうだったー？って…わり、なんか」
「気にしないで紘。その反応が一番つらい。」
でもこれ難しかったよな！と八重歯を見せながらフォローする紘の言葉も耳に入らず机にうなだれる。
もう先生に合わせる顔がない。
まぁ好きだと自覚した瞬間からもう合わせる顔はなかったのだが。
…あれ？でもそうじゃん。
今のでテストは終わり。
明日は土日で、月曜日にテスト返却したら、夏休み。
ってことは。
「今日と月曜日会わなければ私鈴木先生と会わなくて済むじゃん!!!!!!!!!」
高らかにつきあげられたガッツポーズ。
そうじゃんそうじゃん！1か月近く会わなくてすむなら、この気持ちも絶対落ち着いてるし!!
万事解決!!!!



なんて甘い考え、5秒で崩れ落ちた。
パコンと小気味良い音とともに頭にきた軽い衝撃。はぁ？と思って振り返れば、軽く握った拳を携えた鈴木先生だった。
「ほー。んなに俺に会いたくねぇと。」
見える。笑っている口元に似合わないこめかみの青筋が。
慌てた口は命乞いでもするかのように弁明を試みる。
「いや！そうじゃないよ、先生！」
「まぁでも諦めろ。古典できなかったようですし？これはほぼほぼ赤点且つ補習決定のAさんに嬉しい嬉しいお知らせです。」
青筋浮かべたままの笑顔は、冷酷なまでに事実を突き刺してくる。
やめて…なんかの奇跡で赤点逃れるかもしれないじゃない。ないだろうけど。
っていうか、え、まさか。
「今年の夏休み間補習の古典担当、俺だから。」

改めてやってまいりました。
島野A、終了のお知らせ。

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