いと恋しき教師様！[鈴木達央]

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「なんか悩んでんのか？」
放課後、1人で勉強できなさすぎて信長と紘を強制連行で自習室にあるちょっとした個室にいる。
グループで活動するときとか委員会会議とかで使うためのスペースなのだが、テスト前はこうして勉強するために開放しているのだ。
それはさておき、目の前に鎮座する教科書に唸っていた時、隣に座っていた紘がそう言ってきた。
その言葉に思わず頭をあげる。
「ん？なんで？」
「ああ！俺もそう思ってた！」
前に座る信長も、普段は細められている目を丸くして身を乗り出してくる。
「はい？」
持っていたペンをわざわざおいてまで聞いてくるものだから、こちらも一応は体制を整えるように深く座り直す。少し固まっていた背中が痛い。
「なんで？なんで私悩んでるように見えた？」
自分を思い返してみても、べつにこれみよがしにため息をついたりはしていないはずだ。
無意識下でなければの話だが。
でもやっぱり2人は私をよく見ているようで。
「最近ぼーっとしてる時間多いよなー。」
「お前が授業の時間の6割近く窓から外をぼーっと眺めてんの俺は見てるよー！」
あぁそういえば、さっきの古典もそうだったような。
ずっと先生のこと考えちゃって。
好きだなぁ→でも教師と教え子なんて無理だよなぁ→あきらめなきゃだな→でも先生はなんであんな期待させることするんだろ→名前呼ばれたのうれしかったなぁ→好きだなぁ…
の無限ループ。1人いたちごっこのような。ちょっと違うけど。
とにかくそんなくだらない終わりの見えない悩みをひたすらに考えてしまって、授業なんて手につかない状態なのだ。
そのせいで今こんだけ苦しんでいるのだけれど。
「あー…」
勿論鈴木先生が好きだなんて言えなくて、誤魔化すように頬をかいて視線をそらす。
すごく先生を慕ってる信長にも、幼馴染同然である紘にも、相談できない悩み。
でもだからといって女友達であるバンドの子たちにも言えない。
まさに先ほど自習時間に見つけた和歌のとおりなのだ。
はぐらかすような私の動作になにかを読み取ったのか、信長と紘は目線を合わせた後、諦めたように笑った。
「まぁ、しまのんが話したくなった時でいーよ。」
「俺たちはいつっでも聞くからな！その代わり！辛くなったらすぐ言えよ？？」
高校生にもなると、空気を読むことができる、それがありがたい。
深入りせずに、でもいざというときの逃げ道を作ってくれる。
この2人と友達でよかったなんて恥ずかしいこと、改めて思った、そんな放課後。

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