いと恋しき教師様！[鈴木達央]

３３＊ ページ33

周りが一気に爆笑に包まれた。
やべー！！と指差して笑ってくる男子達に、よかったぁとあからさままでに安心する女子達。
あぁ視界に怒ってる紘と慌てる信長が写る。
もう大好きだよ二人とも。あとで頭なでてあげるからね本当。
とりあえず許されると思って、拳の一番固いところで思いっきり背中を殴ってやった。
「ってぇ！？なんだよ！？」
「なんだよじゃないでしょ！仮にも華のJKを捕まえておいてそれとかどんないじめよ!!」
「いじめじゃねーわ!本音だっつの!!!!」
どんだけ暴れてもおんぶしている手がビクともしないのが腹立たしい。
その間に他の生徒が着々とゴールしていって自分らからなんとか話題が逸れ始めた時、先生が歩き始め、
「なぁ、こいつちょっと保健室連れてくわ。」
近くにいた係りの生徒にそう声をかける。
相手の返事も聞かずにフィールドから退場し、先ほどまでの喧騒が嘘のように黙々と歩き続ける。その間も決して揺らしたりはせずに、…やっぱりムカつくけど頼りになる背中が憎い。
ドキドキ高鳴る心臓を知られたくなくて、腕を伸ばして上体をあげる。
「はい、ピーポーピーポー救急車でーすって、先生いねぇじゃねぇかよ。」
背中越しに覗いた保健室はガランとしていて、けが人もいない。不思議と思いキョロリと見渡せば。某100円均一ショップで売られていたであろう小さなホワイトボードに『出張治療中！』と書いてあった。
あ、と小さくこぼせばそれに気づいた先生が首だけ後ろを振り向いて私の視線の先を追い、同じくそのホワイトボード見つけると１つため息をついた。
一旦私を床に下ろした後、わざわざ跪いて履いていた靴を脱がせると、今度は脇の下とひざの裏に腕を差し込んで所謂姫だっことやらをされる。
「っな!!?」
「ちょっと我慢しろよ、すぐだから。」
その言葉通り恥ずかしがる暇もなく、器用に先生は自分の靴を脱ぐと保健室へと上がり、私をソファへと座らせた。
「まぁとりあえず応急処置しときゃぁ今よりはマシだろ。」
手当たりしだい戸棚を開けて、いろいろ物色する背中を見つめる。
ねぇ先生。
さっき期待しちゃったよ。
指令書、好きな人だったらいいなって思ったよ。
なんで先生は私じゃなきゃだめだったの？
紘とか連れてけばいいじゃん。
ねぇ、先生。

好きだよ。

「ん？どしたA。痛む？」
「…なんでもない、っていうか先生、しまのんじゃないの？」
「んー？」

曖昧に笑う、その顔を、とてもとても殴りたいです。

３４＊→←３２＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す