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先生は白いチョークを持つと、
1人1人に目を合わせるようにゆっくりと視線を巡回させながら口を開いた。
「多分、っつか絶対、この中に古典大嫌いな奴っていると思うんだよ。」
その言葉に激しく頷く。
「んでさ、その理由として“意味がわからない”“興味ない”っていうのが大半だと、俺は考えるんだけどどう？」
もう一度激しく頷く。巡らせていた視線を私で留めて、フハッと噴き出すように笑うと、じゃぁさと話を切り出した。
「お前ら百人一首って知ってるよな？」
との言葉には、男子が坊主捲り以外はしたことない！と声を上げる。
それに対し苦笑いしながら頭をかかえた。
「もったいねぇことしてんな。すっげぇいいのに、あれ。…たとえばこれ。」
持っていたチョークで小気味いい音をたてながら黒板に文字を連ねていく。
『忘れじの 行く末までは かたければ 今日を限りの 命ともがな』と。
いきなり始まった授業に頬杖をついて溜息を吐く。やっぱり古典は意味がわからない。
「儀同三司母の唄。女の子は多分共感する子も多いんじゃないかな。この唄。」
1人でニヤニヤし始めたため、なんとなく質問をした責任をとるべく「どういう意味ですか？」と聞く。
勿体ぶったようにゆっくりと弧を描いていた口が開く。
「「いつもまでも忘れないよ」とあなたは言ってくれますが、遠い未来まではわからないので、幸せな今日のうちに、死んでしまいたいと思うのです。最高にあなたに愛されたまま。」
先ほども思ったが、いい声がまるでそこを支配したかのように教室に響き渡る。
誰もが先生の話に関心を持ち釘づけになっていることに、私ですら気づいた。私もその1人なのだから。
その空気を感じ取り、してやったり顔で続ける。
「あとこれも。」
黒板に書かれていく百人一首の唄。
『忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人のとふまで』
「平兼盛の唄。これは今度は男子向けだな。やっぱ青春しちゃってんだろ？お前ら。だったら1度や2度はあると思う。ちなみに俺もあった。」
少し照れながら、目の前にいた男子にロックオンしたのかそちらだけを向いて。
「恋に落ちてしまった。どうも顔に出てるみたいで、あいつらにもバレバレだ。」
眉をひそめて、まるで唄った本人かのように苦虫を噛み潰した顔をする。
どんどんクラス全員が鈴木先生の世界に引きずり込まれていく。
次の唄は？と心待ちにしてしまっている自分がいるのもまた事実。
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セラフ - 前作からのファンです！読んでいて凄く幸せです。応援してます！ (2016年12月30日 13時) (携帯から) (
レス) id: d3a6a115fa (このIDを非表示/違反報告)
杏(プロフ) - どこさん» ありがとうございます！更新速度遅くなってしまってて申し訳ないです；ぜひぜひこれからもお楽しみくださいませ！ (2016年8月1日 2時) (レス) id: bce38d1340 (このIDを非表示/違反報告)
杏(プロフ) - 渡瀬 沙綾さん» お互いがお互いモヤモヤしてる片思いならではの空気感を感じ取っていただけているようでよかったです！すっかり夏のお天気となってきましたね。夏風邪などもありますし、気が抜けない季節ですね！心遣い感謝します＾＾ (2016年8月1日 2時) (レス) id: bce38d1340 (このIDを非表示/違反報告)
杏(プロフ) - 朱美さん» いつ達央さんがナンパしかえされるのかお楽しみにお待ち下さい＾＾コメントありがとうございます！ (2016年8月1日 2時) (レス) id: bce38d1340 (このIDを非表示/違反報告)
どこ(プロフ) - 更新すごく楽しみにしていました！！ありがとうございます(*´∇｀*)よーくさん優しくてほんと素敵ですね…たっつんの過去に何があったのかも気になります……！ (2016年7月22日 4時) (レス) id: 94f97a8ba6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杏 | 作成日時：2016年2月29日 23時
