いと恋しき教師様！[鈴木達央]

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鈍く時折突き刺してくるような痛みが足首を襲う。
くつしたに隠れて見えないが、きっともう腫れていることだろう。
でも我慢しようと思えばできなくない痛みでもあるので、眉をこれでもかと下げた紘と信長の「保健室いきなって」という優しい言葉を遠慮して再度笑って見せた。
いやだって、まだ開会式も始まってないのに保健室って。ダサすぎる。
あのあと女子の代わりに荷物を持って行くと言って箱を持った2人を見送って、自分は大人しくクラスのほうへと足を向けた。
んー…リレーまではもってくれー。
そう願いながら少しかがんで痛む足を摩る。
予想通り感触的に少し膨らんでおり、思わずつかれたため息。
せっかくの体育祭なのになぁと思いながら顔を上げれば、ずっと探していた人をやっと見つけた。
それだけで先ほどまで顔をゆがめるほど感じていた痛みがすっと消えていくのだから不思議だ。
単純だなぁと自嘲気味な苦笑いをこぼしてから、足の怪我に気づかれないように細心の注意を払って先生に近づいた。
「鈴木先生。」
「ん？お、しまのん。」
半袖短パンというなんともラフな格好のため、いつもと雰囲気が違くって少しだけドキドキしてしまう。だっていつもスーツだから。
いつもは見えない脹脛とかに目が行ってしまうのはいたしかたないことだろう。
「先生、どう見ても古典の先生じゃない。」
ドキドキしてしまった腹いせに(勝手にしたのだが)、そう嫌味を言ってやれば、あー？とまるでヤンキーのようにメンチ切ってきた。
強い目力がさらに強くなって、いや、うん、普通に怖い。
「だって俺どこの担任も副担もやってねーからクラスTシャツとかねーんだもん、すっげぇ寂しいわ。」
確かに周りの先生たちは、みんな自分のクラスが作ったＴシャツを生徒とお揃いで着て嬉しそうに笑ってる。着ていない人といえば保健教諭や校長先生なのだが、そういう人たちはそもそも競技に参加しないためいつもどおりの格好である。
そうしてみると先生はだいぶ浮いていて、思わずふき出した。
「っぷ、あははっ、本当だー先生めっちゃ浮いてるー!」
「笑ってんじゃねーよー!!人がさみしい思いしてんのによーおー!?」
ケラケラ笑えばいつもどおり頭に伸びてきた手がくしゃりと髪をかき混ぜる。
そこでそろそろ開会式が始まるというアナウンスが流れた。
「あ、行かなきゃ。」
「おう。精々楽しめ若者よ!!」
笑顔で手を振る先生に最後一言。
「おっさんみたいだね！」
拳骨が下されたのは言うまでもない。

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