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頭は真っ白で。心臓もドクドクとうるさい。
今のは…幻聴?
でも確かに今、先生は、Aって。
基本的に名前で呼んでくるのは女子だけだし、なによりしまのんっていうあだ名が浸透しているため、女子も名前で呼んでくるのはバンドメンバーくらいだ。
クラスメイトはみんな苗字かあだ名。
それは先生もしかり、だったはずだ。
いきなりあだ名で呼ぶわ!と宣言してから、本当に授業中に当てる時までご丁寧にしまのんと呼ばれたものだ。
その優しい声で呼ばれるなら、なんでもいいと思っていたのに。
「せんせ、今、名前…」
真っかになっていると自分でもわかるほどに熱をもった耳を押さえながら恐る恐る隣の存在を確かめる。
「…ん?」
すると先生は意地悪く口端を持ち上げた。
全部わかってる、って顔。ずるい。
「…ばっかじゃないの!?ばーかばーか!!!」
思わずその距離を詰めるように一歩踏み出して思いっきりパンチすれば、その腕は片手で楽々と掴まれてしまった。あぁもう本当にずるい。
「あっぶねぇなぁ。たばこに触ったら火傷すんぞ。」
たばこより、絶対今先生に触れられてるところの方が熱い。
2人以外誰もいない屋上。
上を向けば真っ赤な空が広がっていて。
まるでここだけ隔離されたように静かで、きっとうるさいくらいに聞こえているはずの笑い声もここまでは届かなくて。
時が止まったように、先生は私の腕をつかんだまま離さずに、私は先生から視線をそらせずに__数秒。
キーンコーンカーンコーン
5時を知らせるチャイムが鳴った。
そこでやっと2人とも我に返って、その距離をとる。
2人の間をチャイムの余韻が通りすぎた。
「…はは、固まってた。」
苦笑いとともに醸し出されるどこか気まずい雰囲気に何も言えないでいると、先生は、気付けばものすごく短くなってしまっていたたばこを簡易灰皿に押し付けてじゃぁな、と手を振って行ってしまった。
なに、なに、なんなの?
つい先ほどまで触れられていた腕の熱を逃がしたくないからと、逆の手で包み込むように掴んで胸元まで持っていく。
心臓が、うるさい。
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セラフ - 前作からのファンです!読んでいて凄く幸せです。応援してます! (2016年12月30日 13時) (携帯から) (レス) id: d3a6a115fa (このIDを非表示/違反報告)
杏(プロフ) - どこさん» ありがとうございます!更新速度遅くなってしまってて申し訳ないです;ぜひぜひこれからもお楽しみくださいませ! (2016年8月1日 2時) (レス) id: bce38d1340 (このIDを非表示/違反報告)
杏(プロフ) - 渡瀬 沙綾さん» お互いがお互いモヤモヤしてる片思いならではの空気感を感じ取っていただけているようでよかったです!すっかり夏のお天気となってきましたね。夏風邪などもありますし、気が抜けない季節ですね!心遣い感謝します^^ (2016年8月1日 2時) (レス) id: bce38d1340 (このIDを非表示/違反報告)
杏(プロフ) - 朱美さん» いつ達央さんがナンパしかえされるのかお楽しみにお待ち下さい^^コメントありがとうございます! (2016年8月1日 2時) (レス) id: bce38d1340 (このIDを非表示/違反報告)
どこ(プロフ) - 更新すごく楽しみにしていました!!ありがとうございます(*´∇`*)よーくさん優しくてほんと素敵ですね…たっつんの過去に何があったのかも気になります……! (2016年7月22日 4時) (レス) id: 94f97a8ba6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:杏 | 作成日時:2016年2月29日 23時