いと恋しき教師様！[鈴木達央]

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女子生徒の大半が身を乗り出して先生の自己紹介を聞く中
顔を青くする紘を見て笑いながら話しかけた。
「紘、顔真っ青。」
「うるせぇ…」
なんでこんなに怖がってるのかわかんないんだけど、とりあえずそんなにそっけないなら私の机に肘置かないでほしい。なんて拗ねてみる。
教卓にいる先生…鈴木先生？はこちらが圧倒されるほどの目力で教室を見渡す。
「んー、なーに話そうかなぁ。…なにききたい？」
両手を教卓につきながら人差し指だけトントンと叩くように動かす仕草に妙な色気を感じる。なんか、アブナイ空気。
口端を持ち上げニヤリという言葉がぴったりな笑みを見せた瞬間に、前のめりになっていた女生徒が一斉に手を上げながら先ほどの質問に答える。
勝手に答えるなら挙手しなくてもいいのに。
「先生彼女いるんですか!!?」
飛び交う質問の中でも一際目立った質問がこれ。
きっと結局全員聞きたかったのはここなのだろう。
この質問が出た瞬間になぜか教室が静まり返った。
「えー…っと、彼女は大募集中でっす。」
全員が息をのみ、そして
「私私私!!私なりたい！」「え、ずるい！私も立候補！」「うちもー!!」
一斉に立候補を始める。うるさい。ガヤガヤとまるでＨＲ中のような熱気におなかを抱えて吞気に大爆笑しながら、いいねー女子高生、なんて言って眼尻の涙をぬぐっている。
今の発言、わりと教師としてどうかと思うが。許されるのはやはり容姿のおかげか。
これを…たとえば理科の43歳の男の先生が言えば全員ブチぎれるというのに。
世の中はあまりに不公平である。
「あとは？ほかに質問ねーの？」
女子の戦いに終止符をうったのは他でもない事の発端者であり。
そんな彼はみんながまだ興奮冷めやらぬ中、こちらにチラリと視線を向けた。
そしてバッチリと目が合い、下に逸らされた＿＿と思ったら手元の座席表を見たらしく。
「えーっと、島野Aさん、かな？なにかある？」
指名制なんですか。さっきまであんなに挙手制だったのに。
女子の視線はもちろん男子までこちらを向いてきて。助けを求めようにも紘は真っ青だし信長はこういう咄嗟の行動苦手だし。
…んんんん。…当たり障りのないことでいっか。
「先生が古典の先生になったのはなんでですか？」
大して興味はないのだが。正直言って。
女子の皆さんもなにそれつまんなぁいって顔しないでよ。だったら割り込む勢いで入ってきなさいよ。
そう内心悪態をつきながら前を見れば「いい質問だ」と微笑まれた。

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