いと恋しき教師様！[鈴木達央]

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あのあとHRが長引いたせいで遅刻してきた3人の仲間も揃って、先生も見回りへと戻って行った。
「今の噂の非常勤講師?」
「え、普通にかっこいい待って普通にかっこいい。」
「っていうかさっき隠れて見てたんだけど、A撫でられてたよね!?もうなにそれ!うらやましい!!」
「なにそれなにそれー!!教えなさいよねー!!」
そしてそれから始まった怒涛の先生に対する褒め言葉と私への質問。
出てくる出てくる。さすが女子、と拍手したくなるくらいにノンストップだ。
というか見てたなら出てきなさいよ!練習の時間が短くなった!
そう怒りたいのだが、なんとなく、さっきの先生の歌声とピアノの音は誰も聞いていないようで優越感が心を擽る。
「なんでもないから!!ほら、練習!!」
みんなの質問を全部無視して遮るようにわざと大きな声を出して、ドラムの向かい側に立つ。
いつも練習時は円になって行うのだ。
目を見た方が絶対にいい音が出ると確信しているから。
つまんなぁーいと膨れながらも音量を調整するギター、さっちゃん。
指でドラムスティックを回したり手慣らしに叩くドラム、ルルたん。
比較的残りの2人よりも冷静なベース、はーちゃんは「ところでさ」と話を変える。
「今日、なに歌うつもりなの？」
軽音部の発表は基本的に終業式でのミニステージと文化祭でのステージだ。
だからそれまではその歌の練習、となるわけだが、いかんせん今のバンドは組んでからまだ数ヶ月。そのためお互いの音を知ろうと、最近は1か月に1回曲を変えて仕上げていく…というのを繰り返しているのだ。
曲のジャンルや雰囲気は毎回バラバラ。
がっつりロックのときもあれば、バリバリのアイドル曲のときも。
ちなみに先月はアニメソングだった。最後の方はもうノリとテンションに任せたのでなかなかに楽しかった気がする、とテスト前までの部活を思い返す。
…うん。ひどかった。
そして今日はその曲変えの日。
「…あのーさ。」
今回は自分が曲を決めてきたのだが…うん、なんともタイミングが悪かった。
これ、と先ほど拾ってきた楽譜をみんなに見せる。
「…GReeeeNのオレンジ…って…A……」
嫌な予感。そっと耳をふさぐ。
「ばりっばりの恋愛ソングじゃん!??」
案の定一気に湧き上がる3人。耳をふさいで正解だった。
さっちゃんとルルたんはお互いの手をがっちりとむすんでこっちを見てきて
はーちゃんはなにやらニヤリと笑みを浮かべた。あ、先生に似てる。

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