08 : 桃の香り ページ8
「 Aちゃん、ちょっといい？ 」
桃の香りがふわっと漂う。
ましゅまろみたいな肌に、
ハッキリとした二重まぶた。
おおきい茶色い瞳。
ピンク色の唇はぷっくりしている。
女子の私から見てもかわいい。
宮崎さんは小首をかしげて
両手で鞄を持って私の前に立った。
す、すげえ…女子力の塊…。
「 じゃ、A。先帰ってるわー 」
『 うん、気をつけて 』
「 はーい。宮崎さんもまた月曜 」
「 ばいばい〜 」
かわいいな…。
小瀧先輩も、
こんな可愛らしい方がいいよね。
いいな、なんて。
小瀧先輩の笑顔が浮かぶ。
あ、やばい。
ちょっと泣きそう。
「 ごめんね。宮本さんと帰るとこ、
邪魔しちゃって 」
『 大丈夫だよ〜。どうしたの？ 』
「 永瀬くん、のことなんだけど… 」
ああ！
アイツから古典の教科書、
返ってきてないんだけど！
月曜1限目からあんのに、最悪！
「 なんか仲良さそうだから、
どういう関係なのかなって思って 」
『 え？』
仲良さそうに見える？
あれが？
ぶるっと、身震いした。
「 付き合ってたり…？ 」
『 はあ！？いやいやいやいや！ない！
断じてない！！』
アイツと付き合ってる！？
考えただけで
吐くわ。
「 …そっか 」
『 ？ 』
「 永瀬くんのこと好き？ 」
『 全く。微塵も思ったことないです 』
「 なら良かった。ありがとう 」
『 ん…？、うん 』
「 それだけ聞きたくて。
あ、Aちゃんバスだよね？
私、自転車だからここで 」
『 あ、うん。バイバイ 』
ふわふわ微笑みながら、
私に手を振るもんだから
可愛くていいな。って改めて思った。
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作者名：翠
| 作成日時：2016年1月22日 2時
