さては永瀬。 (ページ31)

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31 : 幻覚ページ31

「俺、T大行くことにした」

バスの中。

いつものトーンで、
そう言う永瀬。

そっか、なんて言ってみるけど。

驚きが隠せない。

かの有名な大学。
そこに永瀬が行く。

ありえる話じゃないか。

特進科だし。

「受かった」

その一言を聞いた時は、
死ぬほど嬉しかったのと、

どこか遠くに行きそうで悔しかった。

私はというものの普通の大学に合格。

あっという間に月日が経ち、
告白する勇気もないまま卒業。

入学と共に、
一人暮らしを始めた。

大学は別々だし会うこともなくなるだろう。

新しい恋をして、
忘れられるだろう。

と思ってた。

ある日。

『え、なんでいんの！？』

「合鍵作っといた」

『はい！？』

家に帰れば、永瀬がいた。

不法侵入じゃね？

と思ったのも束の間、
ピンポーン、とインターホンが鳴る。

「あ。来た」

玄関に向かった永瀬。

夢？幻？

こんなに好きだったっけ？

とりあえず、
お茶飲もう。

鞄の中からペットボトルを出す。

落ち着け。
落ち着け、A！

幻覚だ。
疲れてるんだ。

そうだそうだ！

数十秒後、
永瀬が宅配ピザを抱えて戻ってきた。