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「もう一緒にいるの、やめよう」
「……なんで」
言った、言ってしまった。
今まで生きてきた中で1番くらいに＿＿そのくらい激しく動く心臓に耐えられなくて、明らかに固まった彼の言葉が辛くて、きゅうと喉元が締まる。
幼馴染という言葉に縛られて、私が彼の特別な人になるのは難しいってこと、知ってる。
それなのに幼馴染という関係に甘えれば、となりにずっと居られてしまうから。
甘えたな私にあなたが優しくしてくれるから。
「っ、辛いの。さかたといるのが、辛い」
「幼馴染だからって理由で一緒にいてくれてるの、わかってる。だから」
ボロボロと涙が零れ落ちて止まらない。言いたくない、こんなこと。本当はずっと甘えて、これからも坂田の隣を陣取って、彼を誰にも渡したくなんかない。この特等席を降りたくなんかない。
それでも「彼が私に優しくする理由」「彼が私と一緒にいてくれる理由」この2つの答えが「幼馴染であるから」だという事実に対する辛さの方が勝ってしまった。
「彼が私のことを好きだから」
……これが答えだったらどんなに良かっただろう。
でも違うから、私は終わりにしたいんだ。こんな私だけが嬉しい関係性。
「……幼馴染だからとちゃうよ」
泣きじゃくる私の両手首を掴んで、坂田は真剣な顔をしたままそう言った。真っ直ぐな目がこちらを捉えて離れられない。目に溜まった大粒の涙が1つだけ頬を伝って、他は時間が止まったかのように動きを止めた。
「俺がお前と一緒にいるの、幼馴染だからじゃない。好きだからだよ」
「え……？」
……理解が追いつかない。ただ目の前の大好きな人を見つめることしか出来なくて、何を言ったらいいかとかも全然わからなくて。
「俺、Aのこと好きなんだって！！」
「えっ、え！！？」
「だからそんな理由で一緒にいるのやめるとか言うの……まじで困る」
「え、な、なんで、え……？」
「な、何回も言わせる気なん……？流石に恥ずかしいんだけど」
彼は私の目の前で顔を赤くしながら、ちょっとだけ不機嫌そうに眉をひそめた。ちっちゃくすぼんだ口元が可愛らしい。……いや、今はそこではないな。
「私、もしかして色々ばかだった？」
「ほんとだよ、このおばか！」
軽くおでこを指で弾かれて、じんと響く痛さをしっかり味わった。泣いた直後で熱を持った目元まで可笑しく感じられてしまって軽く笑みが浮かぶ。
私の決めつけからの勝手な言動に相当プンスカしている彼をしっかり見つめて口を開いた。
「私も好き」
今度はしっかり、自分の気持ちを。
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作者名：作者一同 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年7月29日 22時
