「君におかえりが言いたくて」by らぱん( ･×･ ) ページ39
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「じゃ、今日はこの辺でおわりまーす。おやすみ〜」
その言葉を言い切ってすぐ、配信停止の文字をクリック。その後もしばらく流れ続ける「おつさかでした！」という文字列をぼーっと眺めて、ふぅ、と息を吐き出した。
坂田家。俺の事を推してくれている子たちの呼び方。まだまだ流れている文字列も、何でもないことでも呟けばどんどん増えるいいねとかリプライ、リツイートの数も……あんまり現実味がないけど、ありがたいことに現実で。ほんと恵まれてるなぁと思ってる。思っている、けど。
「……配信終わったで〜、」
「うん、聞いてたよ。お疲れ様」
「ん、ありがと」
そろり、配信部屋から出て声を掛けると、イヤホンを外しながら俺の方を向いたA。「配信中にお風呂沸かし始めたからあとちょっとしたら入れると思うけど、先入る？」と聞かれ「俺が先でいいの？」と返したら「いいから聞いてるの」って笑われた。それもそうか。
「じゃあお先に〜」
「ごゆっくりー」
準備をしてから声を掛けるとふわふわとしたいつもの声が返ってきた。……いつも通りだ、当たり前だけど。もやもやしてんのは俺だけだし。
こんな時はお風呂に入って憂鬱な気分まで洗い流してしまえ！！と思ったりしたけど、湯船に浸かってスマホも何も無い状態になるとさっきよりもそのもやもやした考えが強まってしまった。遂に「はぁ……」と大きなため息がこぼれてしまって、そのもやもやから逃げるのは諦めることにした。こうなるともう向き合うしかない。どうせ逃げられんなら早く解決したいし。
さて、俺が何にもやもやしてるかっていうと……彼女に、だ。
わざわざ家に来てくれている時でも配信するのを許してくれるし、その間にお風呂なんて準備してくれるし。完璧な彼女に対して俺がずっと抱えている不満。それは……他でもない彼女が『坂田家っぽくない』ということだ。
crewだとは宣言しているし、実際アルバム買ったり毎週ラジオを聞いてくれてたり、ライブだって勿論来るし……クリアファイルの為に朝から山ほどお菓子を買ってくれたり。それはもうしっかり俺たちのことを応援してくれているcrewだ。それはわかる。だけど彼女のそれは……誰推しなのかがいまいち分からないような応援の仕方なのだ。
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作者名：作者一同 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年7月29日 22時
